2024年度 CCBTアーティスト・フェロー 布施琳太郎によるプロジェクト「パビリオン・ゼロ」の中心かつ最大の企画「ツアー型展覧会」を葛西臨海公園で開催。10名を超える作家群と布施の手により大地、海、空に描かれる架空の水族園構想を全身でお楽しみください。(※申込期間 〜1月24日(金))
2024年度 CCBTアーティスト・フェローである布施琳太郎が取り組む複合的なアートプロジェクト「パビリオン・ゼロ」における第一弾企画となる「市外劇=ツアー型展覧会」を開催します。
「パビリオン・ゼロ」は「ツアー型展覧会」「全天球上映」「雑誌刊行」の3つの要素で構成され、言説なき日本現代美術の内側から「日本の大地=根拠(ground)とはなにか?」をあらゆる手段を通じて問いかけ、拡張されたランド・アートとして制作するものです。
プロジェクトにおける中心かつ最大の企画である本展覧会が開催される葛西臨海公園は、多くの場合その目的を産業や軍事に見出される他の埋立地とは異なり、国境を超えて移動する動植物や市民のための人工自然として開発されました。中央には、2024年末に逝去した建築家・谷口吉生が手がけた葛西臨海水族園が建っていますが、2028年を目処に新館への機能移管が予定されています。
「空」に「カラ」と「ソラ」の2つの意味を持たせた「市外劇=ツアー型展覧会『パビリオン・ゼロ:空の水族園』」は、2月8日・9日の2日間限定で開催され、布施自らがツアーのガイドをつとめます。参加者はヘッドマウントディスプレイを装着し、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)を行き来しながら公園を歩き回り、参加作家たちによる映像、音声、パフォーマンス、オブジェなどと出会い、さらには、船上におけるパフォーマンスも予定しています。
ぜひご応募いただき、葛西臨海公園の大地、海、空に描かれる架空の水族園構想を全身でお楽しみください。なお、ツアー参加者以外の方々も公園内に展示される作品群を自由にご鑑賞いただけます。作品設置場所等、詳細情報は後日発表します。
参加作家
米澤柊、板垣竜馬、涌井智仁、黒澤こはる、倉知朋之介、米村優人、青柳菜摘、田中勘太郎、小松千倫、布施琳太郎
開催概要
■市外劇=ツアー型展覧会「パビリオン・ゼロ:空の水族園」
日時:2025年2月8日(土)、9日(日) 10:00〜/13:30〜
※各回2時間程度、受付は各開始時間の15分前から行います
会場:葛西臨海公園(東京都江戸川区臨海町6丁目2)
定員:各回20名程度(全4回・事前予約制)※申込者多数の場合は抽選
対象:10歳以上
参加費:無料
申込方法:留意事項をご確認の上、応募フォーム(forms)よりお申し込みください。
申込受付期間:2025年1月15日(水)20:30〜1月24日(金)
結果通知:1月28日(月)(予定)
■作品展示
日時:2025年2月8日(土)〜9日(日)10:00〜17:00
会場:葛西臨海公園(東京都江戸川区臨海町6丁目2)
※詳細な展示場所等は後日発表
ツアー型展覧会参加申込にあたっての留意事項
・ヘッドマウントディスプレイを装着の上、2時間程度公園内を歩き作品やパフォーマンスを鑑賞します(ツアー中、着脱あり)。ヘッドマウントディスプレイの装着が難しい方は応募をお控えください。(眼鏡の上からの装着可能)
・10歳未満の方はご参加できません。(装着予定のヘッドマウントディスプレイ「Meta Quest 3」の規定に基づく)
・おひとり当たり、一回のみご応募可能です。(複数日、複数回への応募不可)
・ご参加にあたって特別なサポートを希望される方、車椅子ユーザの方は申込時にお知らせください。
・ツアーは全編日本語で行われます。
・雨天時は一部内容を変更する可能性があります。
・ツアー内、写真・映像の撮影が予定されており、参加者が映り込むことが予測されます。本展覧会で撮影する写真・映像の使用範囲は主催者による記録及び広報活動のほか、アーティスト・フェロー(布施琳太郎)および取材団体などの公式インターネット媒体、SNS、及び、外部メディア(新聞、テレビ、雑誌等)が含まれます。また、3月15日(土)開催の「全天球上映『観察報告:空の証言』※詳細下記」内で上映される作品の素材として使用されます。
アクセス
葛西臨海公園(東京都江戸川区臨海町6丁目2)
JR京葉線「葛西臨海公園」下車 徒歩1分
東京メトロ東西線「西葛西」(T16)・「葛西」(T17)から 都バス 葛西臨海公園行き 約20分
クレジット
ツアーガイド、企画、演出、脚本:布施琳太郎
XR設計:Jackson KAKI
XRコンテンツ制作:米澤柊、布施琳太郎、小松千倫
アートディレクション:八木幣二郎、酒井英作
テクニカルディレクション:村川龍司(arsaffix)、イトウユウヤ(arsaffix)
技術協力:雨宮庸介
設営:田中勘太郎
記録撮影:竹久直樹
制作進行:坂口千秋、加藤夏帆(TASKO)、島田芽生(CCBT)
プロジェクト「パビリオン・ゼロ」
リサーチ、実践、理論を包括的に展開し、言説なき日本現代美術の内側から「日本の大地=根拠(ground)とはなにか?」を問い直す、布施琳太郎によるアートプロジェクト。東京湾に無数に存在する「埋立地」という人工大地を思想的な視点で探究する。市街劇=ツアー型展覧会を中心に、プラネタリウムにおけるアーカイブ映像上映、リサーチやインタビューをまとめた雑誌刊行の3つの要素により構成される。
プロジェクト構成
1. 市外劇=ツアー型展覧会「パビリオン・ゼロ:空の水族園」
ー都内某所の陸上〜空中〜海上でXR体験、パフォーマンス、作品展示などを展開
日時:2025年2月8日(土)、9日(日) 10:00〜/13:30〜(各回2時間程度)
会場:葛西臨海公園
定員:各回20名程度(全4回・事前予約制)※申込者多数の場合は抽選
参加費:無料
申込期間:2025年1月15日(水)記者会見終了後〜1月24日(金)
2. 全天球上映「観察報告:空の証言」
ープラネタリウムを舞台とした水族園空間のシミュレーション上映
日時:2025年3月15日(土)14:30〜/16:00〜/17:30〜
会場:コスモプラネタリウム渋谷(渋谷区文化総合センター大和田12F)
定員:各回100名(先着順・事前予約制)
参加費:無料
申込期間:2025年1月15日(水)記者会見終了後〜上限に達し次第終了
3. 雑誌『ドリーム・アイランド』
アーティスト、小説家、建築家、漫画家などの寄稿文、対談をあつめた雑誌刊行
公開:2025年3月11日(火)予定
開催にあたって(文=布施琳太郎)
テクノロジーは何かを解決してくれるだろうか? 1970年も、2025年も、万博についての報道を調べているとテクノロジーを礼賛する言葉に事欠かない。しかし高度な技術とは、いつの時代も市民にとってはブラックボックスである。このブラックボックスをビジネスチャンスではなく、生の条件を根底から再考するために活用する営みは、かつてサイエンス・フィクションやメディアアートと呼ばれていた。
何かの解決のためではなく、世界そのものの複数化のためにテクノロジーを用いることもできる。そのことを私たちは知っている。
ディープフェイクが実在しないイメージを生成し、フェイクニュースによる世論工作すら可能な現代における危機とは、虚構によって現実が侵食されることではない。むしろ現実によって虚構が侵略されることだ。私たちが直面しているのは想像力の危機なのだ。本展を通じて架空の水族園を構想することは、現実から虚構を切り離し、想像力を再び私たちのものにする試みである。
そのために本展が選択したのは、美術館やギャラリーのように多数の結界が張られた展示方法でも、観客参加型の現代美術の方法のどちらでもない。巨大な自然公園としての葛西臨海公園で、1970年代の寺山修司の市街劇——都市の現実に演劇の虚構を重ね合わせる発明——を参照しながら、誤読し、XRのテクノロジーの活用のために転用するのだ。(市街劇を美術展のフレームに当てはめる試みは、2010年代にカオス*ラウンジが福島県いわき市で試みたが、本展と異なり作品はあくまで静的なものだった)。
かつて批評家の椹木野衣は、自らキュレーションした展覧会『日本ゼロ年』(2000年、水戸芸術館)において「日本の現代美術をリセットする」と宣言した。椹木の宣言は過去/現在や西洋/日本の美術の違いの強調においてこれまで評価されてきたが、むしろ私は歴史をリセットする力、つまり現在地を自由に任意の時点-地点に置くゲーム的なリアリズムの方が重要だったと考えている。リセットのとき歴史こそが想像力を触発する場となるのだ。
こうした意味で、僕は「リセット」という言葉を用いる。過去の公園開発計画を読み解いて、現実の生態系や水族館建築の上に、架空の〈いのち〉や病院建築、死体が泳ぐ地下水槽、新たな天動説、ラブソングなどを重ね描きする。ひとりでは不可能な試みだから、たくさんの人が作品や身体を持ち寄ってくれる。その全体が『パビリオン・ゼロ:空の水族園』なのだ。実際のところ眼に見えるものはほとんどないのだが、それでも確実に、想像上の水族園が姿を現すことになるだろう。
この市外劇=ツアー型展覧会を見逃してしまった方も安心して欲しい。同年3月には、プラネタリウムにおける全天球のイメージ投影をXR装置として転用した映像上映『観察報告:空の証言』(コスモ・プラネタリウム渋谷)、さらに資料展示(シビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT])も行う予定だ。それだけでなく今回の水族園構想とはまったく異なる仕方で、今日の想像力の基盤となるような「一次資料」を集めた雑誌『ドリーム・アイランド』も同時期に刊行予定である。本誌への掲載に向けて本展開催意図についての詳細な論考も僕自身の手で執筆中だ。
そのすべてをもってプロジェクト〈パビリオン・ゼロ〉は始動する。乞うご期待。
CCBT「アート・インキュベーション・プログラム」とは
CCBTのコアプログラムのひとつである「アート・インキュベーション」は、クリエイターに新たな創作活動の機会を提供し、そのプロセスを市民(シビック)に開放することで、都市をより良く変える表現・探求・アクションの創造を目指すプログラムです。公募・選考によって選ばれる5組のクリエイターは、「CCBTアーティスト・フェロー」として、企画の具体化と発表、創作過程の公開やワークショップ、トークイベント等を実施し、CCBTのパートナーとして活動します。