2024年度 CCBTアーティスト・フェロー 布施琳太郎の「かたり」と「映像」による、プラネタリウムでの上映会を開催。葛西臨海公園を舞台に架空の水族園構想を提示する「市外劇=ツアー型展覧会『パビリオン・ゼロ:空の水族園』」、再び。
2024年度 CCBTアーティスト・フェローである布施琳太郎は、言説なき日本現代美術の内側から「日本の大地=根拠(ground)とはなにか?」をあらゆる手段を通じて問いかけ、拡張されたランド・アートとして制作するプロジェクト「パビリオン・ゼロ」を展開しています。この度、「ツアー型展覧会」「全天球上映」「雑誌刊行」の3つの要素から構成される本プロジェクトの「全天球上映」にあたる、「観察報告:空の証言」を開催します。
全天球上映「観察報告:空の証言」は、プロジェクトの中心企画として2025年2月に開催する、葛西臨海公園を舞台に架空の水族園構想を提示する「市外劇=ツアー型展覧会『パビリオン・ゼロ:空の水族園』」の内容を「かたり」と「映像」によってリプレイする試みです。
ツアー型展覧会では、ヘッドマウントディスプレイを装着した参加者たちが、現実と虚構のあいだを飛び回りながら、公園の陸、海、空のなかから想像上の水族園を読み出して、観測します。その観測報告が、古くから存在するXR(クロスリアリティ)装置とも言える「プラネタリウム」で開催される、「空の証言」です。ここでは、プラネタリウムの球面スクリーンは一時的に想像上の水族園となります。
さらに、プラネタリウムにおける催しには、多くの場合、天体の運動や宇宙の起源について紹介しながら機器を操作する「語り部」が存在しますが、本上映会では、この「語り部」を布施が務めます。
単なる記録上映でなく、テクノロジーと身体の関係を再構築し、芸術の現在地を明らかにするための布施によるパフォーマンスの場である「全天球上映『観察報告:空の証言』」に、ぜひお集まりください。
開催概要
全天球上映「観察報告:空の証言」
日時:2025年3月15日(土)14:30〜/16:00〜/17:30〜(各回1時間程度)
※投影時刻開始後はご入場いただけません。時間に余裕をもってご来場ください。
会場:コスモプラネタリウム渋谷(渋谷区文化総合センター大和田12F)
定員:各回100名程度(先着順・事前予約制)
参加費:無料
申込方法:応募フォーム(peatix)よりお申し込みください。
申込受付期間:2025年1月15日(水)20:30〜上限に達し次第終了
アクセス
コスモプラネタリウム渋谷(渋谷区文化総合センター大和田 12F)
・「渋谷駅」各線下車 徒歩10分程度
・CCBTより徒歩18分
クレジット
かたり部、企画、脚本、映像編集:布施琳太郎
音楽:小松千倫
プロジェクト「パビリオン・ゼロ」
リサーチ、実践、理論を包括的に展開し、言説なき日本現代美術の内側から「日本の大地=根拠(ground)とはなにか?」を問い直す、布施琳太郎によるアートプロジェクト。東京湾に無数に存在する「埋立地」という人工大地を思想的な視点で探究する。市街劇=ツアー型展覧会を中心に、プラネタリウムにおけるアーカイブ映像上映、リサーチやインタビューをまとめた雑誌刊行の3つの要素により構成される。
プロジェクト構成
1. 市外劇=ツアー型展覧会「パビリオン・ゼロ:空の水族園」
ー都内某所の陸上〜空中〜海上でXR体験、パフォーマンス、作品展示などを展開
日時:2025年2月8日(土)、9日(日) 10:00〜/13:30〜(各回2時間程度)
会場:葛西臨海公園
定員:各回20名程度(全4回・事前予約制)※申込者多数の場合は抽選
参加費:無料
申込期間:2025年1月15日(水)記者会見終了後〜1月24日(金)
2. 全天球上映「観察報告:空の証言」
ープラネタリウムを舞台とした水族園空間のシミュレーション上映
日時:2025年3月15日(土)14:30〜/16:00〜/17:30〜
会場:コスモプラネタリウム渋谷(渋谷区文化総合センター大和田12F)
定員:各回100名(先着順・事前予約制)
参加費:無料
申込期間:2025年1月15日(水)記者会見終了後〜上限に達し次第終了
3. 雑誌『ドリーム・アイランド』
アーティスト、小説家、建築家、漫画家などの寄稿文、対談をあつめた雑誌刊行
公開:2025年3月11日(火)予定
「かたり」について(文=布施琳太郎)
かつて哲学者の坂部恵が大和言葉の「かたり」について論じた。坂部によれば、「かたり」は、「はなし」の素朴で生活的かつ水平的な関係とは異なり、明確な筋(プロット)を持っている。それは「かたり」が「語り」であると同時に「騙り」でもあるからこその特徴である。例えば教師という「かたり」の主体は意図的に演じられた仮象であり、教壇の上の主体の二重性において、授業という「かたり」は可能になるのだ。つまり「かたり」における「演じられた主体」(教師として語る/教師を騙る私)という二重性こそが、「はなし」と「かたり」を区別する。
・・・
僕にとっての「かたり」のサンプルはただひとつである。それは1980年代の日本で盛んだったテーブルトークRPGのリプレイ文化だ。コンピュータを用いずに、アナログな紙や鉛筆、サイコロ、ゲームブックによってプレイされるテーブルトークRPGにおいて、それまでの現実から離陸してファンタジーのなかへと旅立つためにプレイヤーたちが行うのは「かたり」だった。「かたり」によって部室に集まった学生たちは勇者や魔法使いとなるのだ。
しかしテーブルトークRPGの面白さはゲームマスターの話芸によって左右される。そこでパソコンとゲームの専門誌「コンプティーク」(角川書店)で1986年9月号より展開されたリプレイ企画(座談会記事とファンタジー小説のあいだのような文体)が人気を博した。テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のリプレイとして連載された『ロードス島戦記』は書籍化されてミリオンセラーを記録。その後のライトノベルの起源とも呼べるものとなったのだ。
CCBT「アート・インキュベーション・プログラム」とは
CCBTのコアプログラムのひとつである「アート・インキュベーション」は、クリエイターに新たな創作活動の機会を提供し、そのプロセスを市民(シビック)に開放することで、都市をより良く変える表現・探求・アクションの創造を目指すプログラムです。公募・選考によって選ばれる5組のクリエイターは、「CCBTアーティスト・フェロー」として、企画の具体化と発表、創作過程の公開やワークショップ、トークイベント等を実施し、CCBTのパートナーとして活動します。