2023年度 CCBTアーティスト・フェローとして、contact Gonzo(塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、NAZE)は「皮膚/スキン」をテーマに、その仕組みを多角的に探求し、新作パフォーマンス作品を制作するプロジェクト「my binta, your binta // lol ~ roars from the skinland ~」を展開しました。
パフォーマンス公演に至るまでのリサーチやクリエイションのプロセス、リサーチ過程で実施した関連イベント、そして公演の記録を公開します。
1. プロジェクト概要
身体の接触とそこから起こる反応を軸に作品を制作してきたcontact Gonzoが、「皮膚/スキン」に関するリサーチを経て、皮膚が「外からの情報を微細に受け取る感覚器官」であり、さらに「情報を自ら発信するインターフェース」であることに着目。本プロジェクトでは、皮膚が有するこれらの機能をパフォーマンスに接続し、さらには、パフォーマンス内で感じる痛みや衝撃の感覚を「観る」だけでなく、鑑賞者も皮膚を通じて非接触的に「体感する」、つまり感覚を「共有する」ことを制作の指針としました。
その方法としてパフォーマンスの接触を音としてアンプリファイ(増幅)し、重低音の波として皮膚で体感できる仕組みを模索し作品化。
コンセプト構築やリサーチにはcontact Gonzoに加え、YCAMバイオ・リサーチ 主任研究員である津田和俊が参加。また、音響デバイス構築にプログラマーの稲福孝信、音響設計に西川文章が加わり、新作公演に向けて、オリジナルデバイス開発と音響環境を設計しました。
2. プロセス共有
プロジェクトチーム内での情報共有やアイデア交換のツールとしてDiscordを利用。一部は一般にも公開しました。「#プロセス共有」チャンネルでデバイス開発や衣装、ビジュアル制作などについて、「#コンセプト構築中」では主にコンセプトサポートの津田が皮膚に関する文献の引用や参考リンクなどを共有しました。
2.1_デバイス開発
- 開発コンセプト
- 接触時の衝撃や感触を音に変換してアンプリファイ(増幅)する
- 激しいパフォーマンスとデバイスの相性を考え、シンプルで安価に設計する
- 開発したデバイス
- コンタクトマイク:短い接触音を直接集音。掌のグローブ内に装着。
- 圧力センサー:長い接触時の圧を音に変換。グローブ内に装着。直接集音ではなく、圧力の数値に応じてそれぞれのパフォーマーに設定された固有の周波数をPCから出力。
- 加速度センサー:3Dプリントで制作。ペットボトルのキャップ部分に装着。モノが動くことで加速度変化に応じて事前に録音した音をPCから再生。
2.2_ステージ・音響システム
- 設計/コンセプト
- パフォーマーが感じる痛みや衝撃の感覚を鑑賞者と共有する方法として「音」に注目。空気の振動を通して身体に衝撃として伝わる「低音域」を活用することを決定。
- 低音域のみを再生するサブウーファーの中でも、大型野外フェスなどで使用される「ファンクション・ワン」を2台重ねたものを4箇所、計8台設置。
- サブウーファーの上に板を設置、リング状のステージを設け、観客の目の前から低音が出力される仕組みにした。
- 高音域をカバーするハイボックスはステージ上空に4台吊り下げた。
当初、会場を取り囲むようにサブウーファーを設置することなども検討したが、重低音による振動を消し合う事が分かり断念、壁からの反射がすごかった。
2.3_アカスリ
- パフォーマンスの最終曲としてアカスリを取り入れることに。塚原が初めてアカスリを体験した東京・新大久保のアカスリ専門店の店員をスカウトし交渉したが、出演は叶わず。
- contact Gonzoメンバーの中で唯一アカスリ経験のある塚原が、他のメンバーにアカスリをするというシーンに。
- 垢を出しやすくするための蒸しタオルと、滑りをよくするためのワセリンもアカスリのお店で学んだテクニック。
2.4_衣装
- ビジュアルデザインを担当した小池アイ子が衣装を担当。皮膚との関係性を考える上で、衣装の考案は作品にとって重要な要素となった。
- 皮膚に直接ペイントしたり、肌に日焼けさせる案がベースに進むも、日焼けマシーンの購入が難しく断念。
- 永田和宏氏によるレクチャーにあった「人間の口から消化器官は内部であると同時に外部である」という言葉から示唆を受け、服を「裏返す」案に着地。スポーツウェアを中心に、さまざまな衣装を裏返して着用。
- メンターの宇川さんからチカーノ風衣装の提案があり、観客を含む全ての人が同じバンダナを身に付ける案が浮上。結局、バンダナ案は途中で断念したが、同じコンセプトを継承したベースボールシャツ着衣のアイデアが生まれ、「Skinkand」のロゴ入りユニフォームとして実現。スタッフ全員が着用。
2.5_ビジュアルデザイン
- デザイナー小池アイ子がビジュアルワークを担当。架空の地「スキンランド/皮膚の地」へいざなうイメージを展開。
- 体の部位に対応する脳の領域の広さを表す「ペンフィールドのホムンクルス」が皮膚感覚を司るアイコンとして用いられている。
- プロジェクトメンバーの皮膚のスキャン画像は、公演と同時開催された展示においてポスターやカレンダーとして展開。
2.6_コンセプト構築
- コンセプトサポートを担った津田和俊が皮膚に関する知見や関連情報を集積・共有し、作品制作のアイデアとして活用。
- 津田はパフォーマンスにも参加。自身で集積した引用文章が流れる電光掲示板を背中に担いで会場内を歩き、実会場においても生身のコンセプターとして登場。
3. 関連イベント
3.1_contact Gonzo×永田和宏トーク「『閉じつつ、開く』システムと境界 ~bintaの深層~」
2023.12.19(火)
制作活動におけるリサーチの一環として、細胞生物学者で歌人の永田和宏氏を講師に迎え、振動や圧力、痛みなど、さまざまな情報の授受を行うインターフェースである「皮膚」をテーマとしたオープンレクチャーを開催しました。
永田氏による、口から肛門までは人間の「外部」であるという指摘や、唇と指が異常に大きいペンフィールドのホムンクルスの紹介、筒である人間はトポロジー的に縮めていくとドーナッツになるという考えは、その後の作品創作に大きな影響を与えました。
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/binta_talk
3.2_「Welcome to the Skinland ー皮膚からの情報を意識化するワークショップー」
2024.02.17(土)
公演の実施に先駆けて、触覚ワークショップを実施。contact Gonzoが「皮膚を通して知れること」に着目して開発した新しい遊びを参加者が体験しながら、身体における最大の感覚器官である皮膚でどのような情報が出入りしているのか、 「皮膚/スキン」にあるインターフェースの機能から、身体のメカニズムと動きのプロセスを考えました。
当日は子どもから大人まで幅広い年代の人が参加。パチンコ玉を使って皮膚の感覚を探るワークや、視覚を遮って熱い/冷たいを手がかりにしてゴールを競うゲームなどを実施しました。
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/gonzo_ws
3.3_CCBT Meetup「ステラーク×contact Gonzoー身体の拡張と肉体の衝突」
2024.02.18(日)
自らの身体的経験をパフォーマンス/アート表現として開示する、ステラークとcontact Gonzoの対談を実施。巨匠・ステラークの70年代からの実践とcontact Gonzoの活動を通して、「身体×アート」による感覚の共有、メディウムとしての身体を考察しました。
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/contactgonzo_stelarc
4. 試演会
4.1_概要
リサーチの途中経過発表として、開発中のデバイスを用いたパフォーマンスを試演。それを受けて、後半はメンターを交えてディスカッションでフィードバックをもらい、作品のブラッシュアップを図る機会となりました。
参加メンバー:contact Gonzo(塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、NAZE)、西川文章、稲福孝信、小池アイ子
参加メンター:いすたえこ氏、宇川直宏氏、久世祥三氏
4.2_ディスカッション
プロジェクトコンセプトとデバイス開発について
塚原:実際は複数のレイヤーを想定しているんですが、今日は割とコンタクトマイクの音が目立っていたかなと思います。理想としては、ブリブリの低音が持続音として流れていて、それに打撃音が加わりつつ、ずっとお客さんが音の波の中で揉まれていく感じです。今回は片手にマイクがあったので、片手メインの動きになりがちではあったんですが、どこまで自由に動いていけるか、自分たちの体が楽器のようになっていく過程でどうそれを応用していくのか、通常とは違うアイデアの発想ができたらなと思っています。
今回、コンセプトサポートという形で入っていただいている津田さんにもマイクを渡してみていいですか。
津田:YCAMのバイオリサーチの津田です。今回のパフォーマンスをするにあたって、皮膚が刺激をどのような細胞で受け取っているか、文献を漁ってきました。いろんな刺激をいろんな神経細胞で受け取っていることがわかってきたので、今回も複数の刺激に対して複数の受け取り方をできるよう色々試みました。
機械的な圧力を電気に変換してそれを情報として伝えていく圧電素子は、ピエゾ素子とも言われますけど、結構古くて、1880年位には実用化されていました。一方生物学の方では、メルケル細胞という1つの圧力を受け取る細胞があるんですけど、それが梅干しのような形をしたもので、その中の機構を調べていくと、イオンチャンネルという、うまい棒のような形をしたところで情報を受け取っている。それを、2010年位にピエゾ1、ピエゾ2と名付けているんですよね。物理学でピエゾの歴史は非常に古く100年以上あるのに対して、体に対しての理解というのは本当に最近わかってきたところです。そんな中、皮膚の役割が化学的にも見直されてきている。これまではメディアが視聴覚に偏ってきたのに対して、皮膚が考えることに直結しているということが最近解明されてきた中での、今回の試みかなと思っています。
塚原:そのまま稲福さんにも聞けたらと思うんですけども。そういった前提がある中で、今回2種類のセンシングを試みてもらって、その辺の可能性について伺えたら。例えば、身体と音に関して言うと、昨日ちょうどステラークと話をして、「僕も70年代に身体の内部で起こっていることをアンプリファイして、サウンドとパフォーマンスを作り上げてきたんだよ」って言ってくれて。多分そういう歴史はいっぱいあると思うんです。ただ、お客さんのフィジカルな感覚にまでリーチして、一緒に巻き込んでいくことの可能性について、今できることと、そこからさらにイメージできることってあるんですか?
稲福:最近はメディアテクノロジーを使ったパフォーマンスって、画像解析であるとか、ハイテクなものを演出に組み込むのが多い印象です。今回やっているのは、一応テクノロジーは使っているんですけど、アナログというか、割と枯れてる技術が多い。加速度センサーは10年位前からやってる人はいるし、タッチセンサーも単純な仕組みで、いろんなバリエーションのデバイスが、割と簡単な回路とかプログラムで作れるので、今回それを作り直してみました。めちゃめちゃ高価なものとかハイテクなものより、枯れてるものとか、シンプルなものをうまく使ってなんかできないかというのがあって。誰でも作れるし、それこそお客さんに配るじゃないですけども、そういうのも試してみてもいいのかなと思います。
塚原:多分、パフォーマーが動く道筋や振り付けとか、ものすごく細かくセッティングしていれば、攻めるメディアテクノロジーを使っていくのかもしれない。けど、僕らは動きがランダムで、激しく機材を痛めかねないので、予算の問題とかDIY的な感性をどういう風にメディアテクノロジー的な領域と接続するかというところも、稲福さんには理解してもらいながらデザインしてもらっています。僕らが元々使い捨てカメラを使っているのも、投げれるとか水に濡らせるとか、そういうところと同じ発想で開発をしてくれてるのかなと思いました。
他者の身体を楽器として扱う
宇川:今日出ていた低域って何ヘルツ位なんですかね。90も出てた?ああ、それでこの効果が出ているのであれば凄く良いと思いますよ。当日は8台でスーパーローを出すんでしょ。相当な音圧だと思いますよ。ゴンゾはこれまで5回位見てるけど、今日のシチュエーションは観客も一緒に巻き込まれてるスリリングな体感がすごくよかった。本番もお客さんはスタンディングですよね?
塚原:一昨日会場テストしてみて、こちらが想定していた人数が入るとあんまり自由に動けないだろうと。一旦真ん中にステージがある状況にはなっているんですけど、おそらく降りるかなと。
宇川:なんかステージ上のショーになってない今日の感じ、オフィスで急に喧嘩が始まってみんなビビって止めることができないみたいな空気がすごいよかったんですよね。以前、僕は体育館でゴンゾを見させていただいて、あれもバスケットボールが柵から急に出てきたりとか、元々そこに存在している小物がパフォーマンスに使われているのが本当にリアリティがあって。今日はペットボトルがその役割を果たしていたと思うんですけども、本日はペットボトルの音がいいサウンドエフェクトになっていた。でも、パーカッシブな効果はまだまだ開発できるような気がしていて。途中ハムノイズみたいなのが偶然乗ってきましたよね?あれがめちゃよくて。あのように偶発的に音が重なっていく感じが偶然を装いながら演出できたらすごい体験ができると思ったんですよね。後半ディレイとか入ってきてもいいかなとか、また、リバーブ感だけでも色々遊べるような気がして。
面白かったのは、結構殴打した後に顔を撫で合ってるシーンがあったじゃないですか。あそこが感動的で、しかもあのシーンの音も良くて。ああいった、他者を楽器として扱うアピールみたいなのが、後半もっとあってもいいと思いました。またそうすることによって、可聴領域を超えた音をコントロールしやすくなると思うんですよ。ヴァイオレントなアクション含めて演奏なので、振動も演奏だという暗黙の了解が前提にできる。逆に殴り合っているのにわざと面白いエフェクトをかけたりして、それをさもアクション中に発見したかの様な演出にして、他者を楽器として扱うシーンに発展させることができるなら、爆笑だって誘発できると思うし。
いす:みんなで圧をかけた時の音があったかと思うのだけれど、それをもう少し「あ、苦しい」って自分達も感じられると、同じように体験できている感があるかなって。あと、途中の盛り上がりのところでみんなエキサイトすると思うんで、そういうのをもっとストーリーで出せたら面白いかなと思いました。
低音が溜まると眼球が揺れる
久世:僕が今日来たのは、中間プレゼンを聞いて何が起こるんだろうというのが謎すぎて。殴り合うというのはなんとなく聞いていたので、あ、こうなるのか、というのは思いつつ。よくわかんないところがいいんだろうなと思って、特に結論は考えず。音の体感としても面白かったなと思います。センサーのことが多分難しいんじゃないかと思うんですけど。来くるぞ来るぞ……ドーンって来てほしいと期待したけど、意外とペチッて感じだったりとか(笑)
昔、山川冬樹さんのセンサーを作ったことがあるんですけど。呼吸を録りたいって言われて、バンドを巻いてもらってゴムの感圧センサーが息を吸った時に膨らんで、その溜めの音がドォーーーと来て、バンッとなる感じを、このセンサーをつけるとできるかなって思いました。
宇川:山川さんもリアルタイムで様々なエフェクターをかけたりしてましたよね。ユーロラックのモジュールも導入されていますね。音楽的に面白くするなら、急に高域も入れた方がいいと思うんですよ、空間の抜けも想定してうまく入れ込む。急に誰か一人が高域を出す楽器になるような設定にして、集中的にその人が狙われたり、その人に触れたらその音が出るとか気づかれたりしたら、演奏っぽくなると思うんですよね。そうしないと、低域に埋もれちゃって殺伐とする可能性が高い。
今思い出したんですけど、コンタクトってクラブあったでしょ、今なくなっちゃったけど。そのPAブースの後ろに窪みがあるんですよ。僕、コンタクトからストリーミングするときにスイッチングブースをその窪みの中に作っちゃって。その日はダブステップとグライムのアーティストのみだったので、スーパーローが出っぱなしになる日だったんですよね。その窪みに低音が溜まりまくって、眼球が揺れるのをガチに体感した。その日は5時間配信したんですけど、そこまでくると脳が揺れるのがわかるんですよ。インフラベース8台っていったら、そのレベルに持っていけるんで。普通に眼球揺れるレベル。音溜まりが生み出されたら冗談抜きで本当にそうなりますよ。
久世:眼球揺れるで思い出しましたが、山川さんがホーメイを始めた時に、僕もホーメイクラブに入って練習してたんですが、鳴らすと眼球も揺れてくるんですよね。で、それがわかるのが、テレビとかの光源を見た時なんですね。だから、光源があったりするとわかりやすくなるのかなと思います。
宇川:うわ、やばいですね。会場の明かりってどんな感じなんですか?普通にこんな?急に全部落として、そこからストロボ5分間だけとか、そのような演出が出来たなら、失神者続出です。
津田:皮膚は層になっていて、周波数が圧力で反応する細胞でいうと、どの深さにあるかで変わってくるんらしいんです。マイスナー小体って細胞だと、最もよく振動に反応するのが40ヘルツ位で、範囲は10〜100ヘルツ位らしいんですよ。もっと深いところにあるパチニ小体は250ヘルツが最も反応して、100〜1000をカバーしている。いろんな周波数に対応する細胞があるので、ヘルツを意識してやっていくのがいいかもですね。
宇川:ああ、わかる、わかる。高域用のツイーターで上から音が降ってくるクラブのセッティングで、皮膚が痛いと感じたことがあるんですよ。ああ、なるほどね。
津田:眼球を支えてる細胞の周波数調べて、そこにめがけてダイレクトにいくとか(笑)。
小物や衣装などの演出アイテム
宇川:コンタクトゴンゾのパフォーマンスにおいて小物って毎回重要じゃないですか。本番ではどんな小物を出す予定ですか?
三ヶ尻:多分ベットボトルはあると思います。あと小物っていうよりも衣装の部分で、多分今日着てるような普段の服の延長ではなく。今、試行錯誤中です。そういったところでも変わってくるのかなって気がしてます。
いす:お客さんのドレスコードも早めに言っておくと、みんなそれだけでどうしようどうしようとテンション上がるから。薄着とか、わかんないですけど。
三ヶ尻:さっきいすさんがおっしゃっていた事で、乗っかっていくところの音がグーッとなるといいなってこと、僕もできたらと思ってたんですけども。それをやれるアイデアとかセンシングってあるのかお聞きできますか?
久世:もしアイテムを作って持っていってよければ、風船状のバルーンの気圧をとったりするとか、さっきの感圧ゴムは鉄の粉が入ってるゴムで、押すとそれがくっつきそうになって電気が流れやすくなるというものがあって。そういうものがどこかに仕込んであって、一番下の人が例えば膝小僧ぎゅーってなったりすると、みたいな。それはちょっと身体的じゃなくて、それを鳴らすための動きになっちゃうかもしれないですけど。
圧を音で表現するには
久世:あと、確実に音を出した方がいいなって、見てて思ったところがあって。多分センサーは難しそうな気がします、壊れたりするから。考えたのが、アナログで動きをみながら操作してる人がいて、例えばクリックとかマウスとか、こっちの音を使いたいってなったらチェンジして。見てる人の動きの音がアナログで出るみたいなのをやるといいのかなと思いました。
宇川:ユーロラックのモジュールみたいな感じで、一人一人が別のモジュールというコンセプトで、これとこれをパッチングしたらこの音が出るみたいな感じの構成もアリかもです。4人それぞれが打楽器でもあるし、演奏者でもある。で、それを統合する人がマニュピュレーターで、パッチングも担当するみたいな関係だったらすごく演奏っぽくなりますよね。そして上昇音か下降音かどちらかを、リアルタイムで人が重なりあってる間だけ持続音としてインサートしていくようにすれば、身体同士で演奏してる感じが出ると思うんですよ。人の上に人が乗っいる間、その場所を拠点として「ジョォーー」って磁場が広がっていく感じがでたらいいですよね。
林:ちなみに皮膚感覚のところでスキンランドって呼んでるんですけど、今はどっちかっていうと肉体の衝撃に偏ってる気がして。例えば今日もスリスリとかやってたんですけど、肌を擦るような感覚を増幅するという筋は、そんなにないですか?
塚原:今の話両方に思っていたことは、例えば静電センサーって、触ってからちょっとラグがあってギュッて上がって、マックス域は決まってるんですけど、最初はゆっくりウーーとなっていて、接触時間によってボリュームが上がるということができる。接触が圧でも表現できたら嬉しいけど、時間みたいなことはできるのかなって。
宇川:それいいですね。重なったら、時間も重なっていくから伸びていくってことですよね。ドローンっぽく持続する。
塚原:その中で、それぞれの静電センサーから、違うヘルツとか域帯を同時に出すことができたら、僕らが4人ともグチャーって近寄ってる時が一番変な音が出るみたいな。
宇川:いいかも。威嚇しあっているけど、肩寄せ合って、殴り合わずに、みんなで寄りかかるシーンあるじゃないですか。そこに低音が溜まって、ドローンぽい演奏になっていくとか。そんな感じにできたらメリハリがでて、音楽っぽくなるかもです。
久世:今のは技術的にどうですか?僕の静電センサーのイメージだと、地面にちゃんとついていたら安定するんだけど、ジャンプしたら、地球に抜ける電気の量が変わって、センサーの値が不安定になったり。多分ずっと触っているのを、ある程度時間が溜まったらリセットしないと、ずっと反応しっぱなしになるんですよね。
稲福:なるほど、今日やったのもそういうのがあったりして。なんか、やりたいことは理解はしていて、それをどうやればいいか考えてるんですけど、なかなか静電容量だけに頼るのは難しいのかなって今日見ながら考えてましたね。ノイズがすごいし、押してるは押してるんだけど、これはノイズなのか、触ってるって状態なのかの判別が難しくて。なにせ動いて殴り合ってるので。
宇川:インフラベース8発だったら、本当にそうなると思いますよ。ずっとものすごい音圧が出てる感じになるのをどうやって抜くか、そこ重要ですよね。
塚原:その辺、文章さん、いかがですか?今日も生音シーンも結構あったじゃないですか。
西川:いや、生音シーンは意図的には作ってはないんだけど、NAZE君のマイクが途中で壊れて、とかっていうのはありましたけど。
塚原:なんか、事故的なことを期待したらあかんのやけど、面白い音圧的な谷間を産んでて面白かったなと思ったんですけど。低音ずっと問題は、課題かなって思います。
いす:なんかあの、昔の京急のドレミファってやつあるじゃないですか。ちょっとお笑いみたくなっちゃうかもしれないんですけど、ああいうのも圧している時に鳴ると、楽しいというか、笑っちゃう。音の抜けの時間とかがあっても面白いかなって思いました。
低音から逃げられるのか
小池:質問なんですけど、見てる人は衝撃を防ぐことはできるのですか?
塚原:ビジュアル面、全部やってもらってる小池アイ子さんです。
林:すごい体感的な話なんですけど、昨日テストしてみてしんどいのってハイボックスから出る普通の音なんですよね。鼓膜大丈夫かなっていう感じで。それは距離を取ればなんとかいけるんですけど、低音は今のところ身体的危機を感じるほどではなかったんですよね。
三ヶ尻:文章さん、低音ってどういう逃げ方があるんですか?音響的な話で。
西川:低音は逃げられへんというか。エネルギーが大きいので、外に行くんはいいけど、部屋の壁際が強くなるんですよね。その人がどういう状態で低音を感じているか、まあ、揺れる状態で酔いそうやなって人は、壁にいくと余計に低音を感じちゃうので、移動しながら自分が気持ち悪くないところを探すとかですかね。
三ヶ尻:今日色々お聞きした上で自分が思ったことは、センサーがあることで、動きもちょっと制約されるというか、それに応じた動きになって。それをどうしていこうかというのが自分にとってのフィードバックでした。
松見:確かに衝撃音とか、皮膚の感覚がアンプリファイされているということからは、まだ離れた位置にいるかなっていうのが体感的にはあって。究極、皮膚で感じたことが、シナプスを通っていった電気をどっかでキャッチして、脳みそに送られていく信号を直に取れたら一番面白そうやなと思いました。一個のデバイスとかで、うなじにばちって針みたいなのを刺して、そこから直接信号が取れる日が来たら、面白いパフォーマンスになるかもって妄想してました。
塚原:まあ、それができたら、もう僕ら何もしなくていいかも(笑)、信号だけでいいからさ。この話はもうちょっと先の未来にしましょうか。
5. 公演
5.1_公演概要
contact Gonzo パフォーマンス公演「my binta, your binta // lol ~ roars from the skinland ~」
ビンタはスキンランドへの入口
シバきまくって全員を引きずり込む
開催日時:2024年3月1日(金)19:30、3月2日(土)15:30、3月3日(日)15:30
会場:ヒルサイドプラザ(東京都渋谷区猿楽町29-10ヒルサイドテラス内)
定員:各回100名
観覧料:無料
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/skinland
5.2_トレイラー
荒野を駆け抜ける一台の車。道端に見えた「Welcome to the Skinland」の看板に気を取られて車は転倒。荒野に生える草木に見えたものは巨大な毛だった……。
このトレイラーのイメージは、フリーマガジンに掲載された塚原による小説『roars from the skinland / the novel』へと繋がる導入となりました。
5.3_パフォーマンス写真
5.4_ポストパフォーマンストーク
3月2日(公演2日目)の公演後に行われたトークの記録。
5.5_展示
公演会場であるヒルサイドホールの受付フロア(地下2階)では「皮膚」をテーマにした展示を行い、作品のコンセプトや背景、ビジュアルイメージの補完、拡張を試みました。
皮膚のスキャン画像プリント、NAZEによるクリエイション過程のドローイングを中心に、選定過程の衣装、ターポリン出力された皮膚スキャン(過去作品)、皮膚について想起する言葉がランダムに生成される川柳を電光掲示板をつかって展示しました。
展示内容:
- NAZEによるドローイング
- 皮膚をスキャンしたポスター、カレンダー
- 皮膚川柳
- 衣装ために収集した衣類
- チッチャロン(フィリピンの豚の皮の揚げ菓子)
6. マガジン|The Skinland Times
公演会場でフリーマガジン「The Skinland Times」を配布しました。塚原が書き下ろした『roars from the skinland / the novel』は、2700年代に皮膚培養をビジネスにするコナクティカ・ゴナズ社の社員がスキンランドで肉ドーナツ化するというストーリーを描いたSF小説。
デザイン:小池アイ子
7. クレジット
contact Gonzo
「~ my binta, your binta // lol ~ roars from the skinland ~」
パフォーマー|contact Gonzo(塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、NAZE)
コンセプトサポート|津田和俊
舞台監督|河内崇
音響設計|西川文章
音響オペレート|溝口紘美(ナンシー)
デバイス設計|稲福孝信
照明デザイン|contact Gonzo
テクニカルサポート|伊藤隆之(CCBT)
ビジュアルデザイン・衣装|小池アイ子
ドローイングアーカイブ|NAZE
制作・進行管理|林慶一、岩中可南子、島田芽生(CCBT)
協力|happy freak