多様な地域・立場・地位のアーティストや研究者、アクティビストたちによる、人間のアイデンティティの新たなあり様を模索するプロジェクトや活動、作品等を網羅する「Cyberfeminism Index」。
本プロジェクトの実践を日本で初めて総合的に紹介するレクチャー&シンポジウムを開催。
アート、テクノロジー、デザインの国際的なシーンにおいて話題となっているオンライン展覧会/書籍によるプロジェクト「Cyberfeminism Index(サイバーフェミニズム・インデックス)」。本プロジェクトの企画者・著者であり、デザイナー/研究者のミンディ・セウ氏の来日にあわせ、CCBT Meetupを開催します。本イベントでは、日本社会における芸術や技術をフェミニズムや技術史の観点から考察しながら、「Cyberfeminism Index」の実践を日本で初めて総合的に紹介します。アートとデジタルテクノロジーを通じた創造活動を参照することで、これまで見落とされてきた作品や文脈を再発見するとともに、ジェンダーの差異を超越したイメージ・言説に出会う機会を創出します。
「Cyberfeminism Index」は、アメリカ・ニューミュージアムにあるインターネットをベースとしてデジタルアートの作品保存やオンラインアーカイブ、展覧会を行う組織Rhizome(ライゾーム)との共同のオンライン展覧会であり、書籍でもあります。ここで言われる「サイバーフェミニズム」とは、芸術や科学にあるジェンダー的な枠組みへの対抗や、インターネット環境で展開・普及するフェミニズムの運動だけには留まりません。1985年に発表されたダナ・ハラウェイによる論文「サイボーグ宣言」は、機械と生物との複合体「サイボーグ」から、自然と文化、公的と私的、男性と女性といった二項対立からの逸脱と、これらを超越した世界、社会への変革を促しました。以降、「サイボーグ宣言」は、ジェンダー論のみならずエンターテインメントやアートシーンにまで多大な影響を及ぼし、とりわけ、オンライン・プラットフォーム上には、この概念を表象するかのような様々な作品や活動が現ました。「Cyberfeminism Index」は、こうしたオンライン上に展開された学術論文や社会運動、アートプロジェクト、ネットアートやニューメディアアートなどの700以上もの様々な実践を収録し、現在もなお更新され続けています。そこには、人間の性差を超えたアイデンティティや身体のイメージについての、より多様な人々による語りと実践が見えてきます。
「交差する、身体/ジェンダー/イメージ/テクノロジー:Cyberfeminism Indexにみる多義的な実践と理論」開催にあたって
キュレーション:水品マミ
「Cyberfeminism Index」は、2020年にインターネット上のプロジェクトとして公開されました。2022年には書籍版『Cyberfeminism Index』が刊行され、これまで世界各地で刊行記念ツアーを実施しています。今回のレクチャー&シンポジウムはこうしたツアーの一部であり、日本におけるCyberfeminism自体の紹介・導入も目的としています。
特筆すべきは、このインデックスの内容が複数の専門家やウェブページ訪問者の手を借りながら集められており、収集方針にも西洋中心からの脱却が掲げられている点です。こうした進め方はフェミニズムへの批判などを踏まえており、結果として、多様な例を収録することにつながっています。また、収録されている例は分野も異なるものが多く、アートを中心に、アクティビズム、ダナ・ハラウェイの「サイボーグ宣言」をはじめとするマニフェストや理論、そしてそうした言説に対する批判まで収録されているのも特徴です。
インデックスのイントロダクションでミンディ・セウが書いているように、「Cyberfeminism Index」はフェミニズムのみを扱うものではなく、テクノロジーのみに焦点をあてるものでもありません。個々の実践は現実の諸問題と関連し、簡単に一つの定義に収束できません。今回はそうした未完で不完全で変異が起こり続けるところから、話を始めます。
開催概要
交差する、身体/ジェンダー/イメージ/テクノロジー:Cyberfeminism Indexにみる多義的な実践と理論
日時:2023年11月25日(土)13:00-19:00 (12:30開場、途中休憩あり)
定員:90名(事前申込不要・先着順)
登壇:
Mindy Seu(デザイナー、テクノロジスト)
Melanie Hoff(アーティスト、エデュケーター)
四方幸子(キュレーター、批評家)
高橋さきの(翻訳者)
布施琳太郎(アーティスト)
水品マミ(インディペンデントキュレーター、アートコーディネーター)
タイムライン
13:00-13:05 イントロダクション
13:05-16:40
[第1部]来たるべき「過去」のためのミートアップ
- レクチャー1「Cyberfeminism Index―揮発し浮遊する、見えない身体について」
スピーカー:水品マミ - レクチャー2「Cybernetics of Sex―セックスとジェンダーの表象と実践」※タイトルが変更になりました(11月8日)。
スピーカー:Melanie Hoff *オンライン登壇 - レクチャー3「現場としての『からだ』、結節点としての『からだ』」
スピーカー:高橋さきの - レクチャー4「ネットワークのなかの恋人たち:身体・性・実在の三十年」
スピーカー:布施琳太郎 - Q&A
17:00-19:00
[第2部]「Cyberfeminism Index」から考える、これからのアート/デザイン
- 講演「Cyberfeminism Index Performative Reading」
スピーカー:Mindy Seu - ディスカッション/Q&A
パネリスト:Mindy Seu、四方幸子、高橋さきの、布施琳太郎、水品マミ