2024年度 CCBTアーティスト・フェロー 布施琳太郎によるプロジェクト「パビリオン・ゼロ」の全貌を一挙公開。壮大なプロジェクトの進行のなかで生じたドキュメント、記録、そして作品群を展示します。さらに、美術雑誌『ドリーム・アイランド』を部数限定で頒布します。(※3月11日(火)〜リアルスキャン版、3月14日(金)〜製本版を配布予定)
2024年度 CCBTアーティスト・フェローである布施琳太郎は、言説なき日本現代美術の内側から「日本の大地=根拠(ground)とはなにか?」をあらゆる手段を通じて問いかけ、拡張されたランド・アートとして制作するプロジェクト「パビリオン・ゼロ」を展開しています。
この度、プロジェクトの全体像を提示する試みである「パビリオン・ゼロの資料室」を開催します。本展では、2025年2月に葛西臨海公園を舞台に架空の水族園構想を描いた「ツアー型展覧会」、その試みをプラネタリウムにて「かたり」と「映像」でリプレイする「全天球上映」、アーティストや建築家、漫画家などによる寄稿文、対談等を集めた「雑誌刊行」の3つの要素から成るプロジェクトの進行のなかで生じたドキュメントや記録、作品群を展示します。
さらに会場では、プロジェクトの「雑誌刊行」にあたる、美術雑誌『ドリーム・アイランド』を部数限定で頒布します。(※3月11日(火)〜リアルスキャン版、3月14日(金)〜製本版を配布予定)近年のアートシーンにおける言説や批評の不在への布施の危機感から企画された美術雑誌の創刊にあたっては、第1号の特集テーマを「大地=根拠」と設定。多様な立場の人々が、建設設計から埋立地、水族館、万国博覧会、ヴァーチャル・リアリティ、アニメーション、モニュメントまでの広範な主題を自らの実践を通じて思考しながら、このテーマと向き合って言葉を紡いでおり、それらは全て「一次資料」であることが徹底されています。
布施の実践における真髄とも言及できる「言葉」による表現は、映像や絵画、あるいはキュレーションなど多彩な手法を操り制作される世界を一挙に拡大し、そして揺るがない根拠を形成してきました。プロジェクト「パビリオン・ゼロ」はまさにその真骨頂であり、今日必要とされる壮大な実験であったと言えるでしょう。虚構を、そして想像力を再び私たちのものにするための挑戦であり、旅路であった本プロジェクトの全貌を、ぜひお楽しみください。



(参考)市外劇=ツアー型展覧会「パビリオン・ゼロ:空の水族園」開催の様子 撮影: 竹久直樹
出展作品(予定)
米澤柊「空とあたたかい」
板垣竜馬「Tem P」
板垣竜馬「Independent navigation」
涌井智仁「Mint Used Junk」
他



美術雑誌『ドリーム・アイランド1 特集:大地=根拠』
目次
[パビリオン・ゼロ アーカイヴ Ⅰ ]
記者会見 第一部 原稿
記者会見 第二部 椹木野衣+落合陽一+布施琳太郎 日本の大地=根拠とは何か?
[文]
水野幸司 東京湾埋立地風景私論
井上岳 見えない基礎と新しい境界
伊藤道史 揺れる地面と身体の生
米澤柊 生きものが生きる場所
村井琴音 私ではないあなたのモニュメント
布施琳太郎 動詞的な恋人たち
[対談]
魚豊+布施琳太郎 いま、私たちがつくべき嘘は何か?
[パビリオン・ゼロ アーカイヴ Ⅱ ]
空の水族園
編集 布施琳太郎、酒井瑛作
デザイン 八木幣二郎
プロジェクト「パビリオン・ゼロ」
リサーチ、実践、理論を包括的に展開し、言説なき日本現代美術の内側から「日本の大地=根拠(ground)とはなにか?」を問い直す、布施琳太郎によるアートプロジェクト。東京湾に無数に存在する「埋立地」という人工大地を思想的な視点で探究する。市外劇=ツアー型展覧会を中心に、プラネタリウムにおけるアーカイブ映像上映、リサーチやインタビューをまとめた雑誌刊行の3つの要素により構成される。

プロジェクト構成
1. 市外劇=ツアー型展覧会「パビリオン・ゼロ:空の水族園」
ー都内某所の陸上〜空中〜海上でXR体験、パフォーマンス、作品展示などを展開
日時:2025年2月8日(土)、9日(日) 10:00〜/13:30〜(各回2時間程度)
会場:葛西臨海公園
定員:各回20名程度(全4回・事前予約制)※申込者多数の場合は抽選
参加費:無料
申込期間:2025年1月15日(水)記者会見終了後〜1月24日(金)
2. 全天球上映「観察報告:空の証言」
ープラネタリウムを舞台とした水族園空間のシミュレーション上映
日時:2025年3月15日(土)14:30〜/16:00〜/17:30〜
会場:コスモプラネタリウム渋谷(渋谷区文化総合センター大和田12F)
定員:各回100名(先着順・事前予約制)
参加費:無料
申込期間:2025年1月15日(水)記者会見終了後〜上限に達し次第終了
3. 雑誌『ドリーム・アイランド』
アーティスト、小説家、建築家、漫画家などの寄稿文、対談をあつめた雑誌刊行
公開:2025年3月11日(火)予定
開催にあたって(文=布施琳太郎)
この度『パビリオン・ゼロの資料室』を開催する。
本年1月から立て続けに実施された記者会見、葛西臨海公園での市外劇=ツアー型展覧会、雑誌編集を終えて、いまだプラネタリウムでの観察報告会を残したタイミングであるが、ここまでのプロジェクト進行のなかで生じたドキュメントと作品を並べて公開する試みだ。
いまの時代に「アート」という言葉の向こうに思い浮かべることのできる〈すべて〉を一気に実践してみるようなプロジェクト『パビリオン・ゼロ』は、企画者である布施琳太郎だけの力では何も実現することのできないものだった。2年ほど前に葛西臨海水族園の移設を知り、そして2025年4月より開始する大阪・関西万博についての報道を横目に見ながら「葛西臨海公園で展覧会がしたい!」と思った僕は、公園での展示も、劇も、ヘッドマウントディスプレイを用いた作品制作も、雑誌編集も、何もかもしたことがなかった。しかし多くの人々のサポートによって、自らの妄想をかたちにすることができた。いや、それは僕個人の妄想を超えて、時に期待を裏切りながら、より未知の方向へと繰り返し舵を切り続ける旅路のようだった。
プロジェクトの打ち合わせや制作のために繰り返し通ったシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]のなかに、葛西臨海公園での展示作品や会場サイン、パフォーマンス小道具の一部、記録写真や映像を展示する。さらに展示記録を含む美術雑誌『ドリーム・アイランド』の無料頒布も行う。
雑誌『ドリーム・アイランド』は葛西臨海公園での展示『空の水族園』からは独立した読み物である。そこではアーティストや建築家、漫画家などが、建築設計から埋立地、水族館、万国博覧会、ヴァーチャル・リアリティ、アニメーション、モニュメントまでの広範な主題を自らの実践を通じて思考しながら、このテーマと向き合って言葉を紡いでいる。「いま・ここ」の話題で埋め尽くされたアートシーンのなかで「かつて・遠く」について想いを馳せ、これからのアートのための大地=根拠をつくりだすことを意図して様々な専門性を持つ執筆者をあつめた。
すべての展覧会を見ることはできない。世界中のすべての人と会うことはできない。しかし私たちには想像力がある。この資料室は、私たちの想像力のための休憩所、あるいは集会所だ。東京沿岸を埋め立ててつくられた葛西臨海公園の鳥類園で国境を越えて集まる渡り鳥が羽を休めるように、気楽に、だけど眼と耳をひらいたままで足を運んでもらえたら幸いだ。
CCBT「アート・インキュベーション・プログラム」とは
CCBTのコアプログラムのひとつである「アート・インキュベーション」は、クリエイターに新たな創作活動の機会を提供し、そのプロセスを市民(シビック)に開放することで、都市をより良く変える表現・探求・アクションの創造を目指すプログラムです。公募・選考によって選ばれる5組のクリエイターは、「CCBTアーティスト・フェロー」として、企画の具体化と発表、創作過程の公開やワークショップ、トークイベント等を実施し、CCBTのパートナーとして活動します。
