2025年度アーティスト・フェロー上田麻希、岸裕真、土井樹、藤嶋咲子、山内祥太が、活動テーマ「これからのコモンズ」を思考するそれぞれのプロジェクトについて紹介するとともに、2022年度フェローでリニューアル特別展を飾るSIDE COREをモデレーターに迎え、アーティストをはじめとする「つくり手」と「これからのCCBT」による協働が、社会に果たしうる役割についてディスカッションします。
CCBTでは、原宿への移転・リニューアルオープンに際して、アーティスト、デザイナー、研究者、技術者、文化従事者、市民──多彩な立場を有する人々が集う場を創出し、世界や都市の動向を参照しながら、共創のための足がかりを検討するオープニングトークを開催します。
CCBTを象徴するプログラム「アート・インキュベーション」では、2022年度の開設以来、2024年度までに全15組のアーティスト・フェローと協働し、「想像力」を起点に都市・東京を舞台とした多彩なプロジェクトや表現を生み出してきました。こうして生まれた作品や取り組みは、東京に留まることなくCCBTから異なる都市、さらには世界へと紹介されています。
本オープニングトークでは、2025年度の活動テーマ「これからのコモンズ」を思考する意欲的なプロジェクトを展開するアーティスト・フェロー上田麻希、岸裕真、土井樹、藤嶋咲子、山内祥太が登壇し、それぞれの活動を紹介します。さらに、モデレーターには2022年度アーティスト・フェローでリニューアル特別展を飾るSIDE COREを迎え、都市空間や社会的制度、日常の「当たり前」に想像力をもって切り込む可能性や、それらのアクションが都市やそこに住む人々にもたらす変容についてディスカッションします。
これらを通じて、アーティストをはじめとする「つくり手」と「これからのCCBT」による協働が、社会に果たしうる役割を共に考えます。
アクセス
LIFORK HARAJUKU(渋谷区神宮前1-14-30 WITH HARAJUKU 3F)
原宿駅東口より徒歩1分、明治神宮前〈原宿〉駅2番出口より徒歩1分
2025年度アーティスト・フェローによるプロジェクト
上田麻希「Olfacto-Politics: The Air as a Medium(嗅覚の力学 〜メディウムとしての空気〜)」

匂いを手がかりに「コモンズとしての空気」について学び、見えない空気を見える化・体験化する複合プロジェクト。レクチャー・ワークショップからなる学びの場の創出、極めて主観的な感覚である嗅覚をテクノロジーで測ることで嗅覚世界を可視化するリサーチ、空気の循環を表現する空間作品を制作・発表する三つのフェーズから成る。人間を含む全ての生物が多種多様な情報をやりとりしている「空気」から、生物多様性やバイオームへの思考を促し、世界を捉える新たな視点を生み出すことを目指す。
岸裕真「平行植物園」

植物的視点から現代の人工知能(AI)を捉え直した、「植物知性(BI・Botanical Intelligence)」を開発するプロジェクト。光・風・土壌などの多元的な環境データを精緻にセンシングし、テキストや音声を出力する「生成BI」の実装を通して、人間・人間以外が共に繁栄できる「コモンズ」の開拓を目指す。完成したシステムはインスタレーション作品として植物園などにおいて公開するほか、研究開発の過程では専門家との協働や、オープンレクチャー、ワークショップ等の開催を予定。CCBTを拠点に、すべての存在にとっての共有資源である自然から思考し、新しい共栄地帯を発見することに挑む。
土井樹「Weather」

風の流れ、気温、照度など、微細な環境変化を捉えるセンサーを市民とともに創作し都市に設置することで、従来の気象庁などによる広域データでは捉えられない「微気候(microclimate)」を収集し、オープンデータとして公開。さらに収集したデータを音・光・風などの知覚体験に変換するシステムを開発し、これを用いたインスタレーション作品を発表する。プロジェクトを通じて、言語やイメージに偏ったデジタル社会において、人間の身体性に根差した「別種の知」を取り戻すことを試みる。
https://cotofu.com/weather/
藤嶋咲子「コエノクエスト —都市に残されたセーブデータ」

都市に埋もれた声を可視化し、これまで交わることのなかった他者との対話の場を生み出すことで、世界の見え方に揺らぎを与えるゲーム作品を制作するプロジェクト。ゲーム内に登場するアバターは、実在する都市生活者の語りをもとに生成され、プレイヤーはその営みや痛みに触れながら、自身の輪郭の外側にある価値観や生き方に出会っていく。体験はインスタレーションとして展開され、記録された対話のログは再編集のうえ公開される。年齢、性別、国籍、経済状況、思想などに起因する分断を背景に、すれ違う声が交差する状況から、新たなコモンズの可能性をひらく手がかりを探る。
山内祥太「未知との遭遇」

「未知なるものとは何か」という問いを出発点に、言語の枠組みに依存しない、ヒューマノイドと人間のあいだに生まれる新たなコミュニケーションの形を構想するプロジェクト。インスタレーション作品として屋外での発表を予定しており、「未知」との遭遇――すなわち「新たな自然」との出会いを試みる。作家自らによるデモンストレーションやレクチャーを通じて制作過程は広く公開され、ともに未知なるもの(未来)について想像することから、プロジェクトを通じて「これからのコモンズ」をかたちづくる想像力を養う。









