ホーム / リサーチノート / CCBTと大学・研究機関との協働事業「音楽デバイス開発プロジェクト」
(2023.6-2024.6.)


シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]では、大学や研究機関との協働事業として、アートやデザイン、テクノロジー分野の学術研究を活用する、都立文化施設における新しい鑑賞体験や情報保障支援等の開発に取り組んでいます。

「音楽デバイス開発プロジェクト」は、東京藝術大学芸術情報センター(AMC)と東京文化会館と協働し、さまざまな身体的特徴や文化的背景、考えを持つ人々の協働を通じて新しい芸術文化の楽しみ方を探求するものです。本プロジェクトでは「音楽の新しい捉え方や共有方法の共創」をテーマに、音の可視化や触覚技術、情報視覚化技術を活用し、音楽体験の新しいかたちを模索し、実現化するデバイスやコンテンツの開発を目指しています。

2023年度は、デバイスの開発に取り組む開発チームと、音楽の専門家を招いてデバイスを検証・活用方法を探る全体チームに分かれ、交互にミーティングや研究会を展開しました。
開発チーム:全体チームでの意見を基にデバイスの開発・試用を実施。あわせて、当事者へのアウトリーチ活動を通じて、体験者の反応や感想をもとにデバイスの効果を検証・改良。
全体チーム:定期的に全体研究会を行い、ろう当事者および音楽/音楽教育の専門家との意見交換を行いながらデバイスの方向性を探ると同時に、音楽ワークショップに組み込むために必要なシステムについて検討。あわせて、チャットサービス「Discord」を用いてオンライン上で意見交換・情報共有に取り組む。

2024年度は、開発したデバイスのオープン化に取り組みました。オープン化にあたり、ドキュメントおよびろう当事者による手話通訳も制作しました。


ここでは、全体の流れとともに、プロジェクトにおけるデバイスやコンテンツ開発に向けた研究会の様子をレポートとして紹介します。

レポート執筆者:
多田伊吹(CCBTインターン生(2022-23年)/ろう者)
榮咲季(東京文化会館)
松浦知也(SoundMaker、東京藝術大学芸術情報センター特任助教)

文責:鹿島萌子(CCBT)

第1回全体研究会

実施日:2023年6月19日(月曜日)
会場:オンライン

音楽ワークショップの構想とデバイスの方向性について協議。具体的には、さまざまな楽器を使用してきた音楽ワークショップでの参加者の体験や感想を共有し、ろう者と難聴者が音や音楽を楽しむためのアプローチやテクノロジーの活用方法を探った。


レポート執筆:多田伊吹

第1回研究会は、東京文化会館ワークショップ・リーダーによるミュージック・ワークショップ構想のヒアリングや、開発するデバイスやツールの方向性などについての話し合いを実施しました。

東京文化会館ワークショップ・リーダーがこれまで取り組んできたワークショップのまとめとして、サウンドシェイプ、ジャンベ、レインスティック、トーンチャイムなど色々な楽器を使ったときの様子や、その場ででた参加者の感想、リーダーの意見などを共有したり、今回使用するデバイスの種類などを検討したりしました。

ろう者と難聴者が音楽を楽しむためにはどういう方法が適切なのか、アナログやテクノロジー技術をどう活かすか、とまだイメージがはっきりと湧かなかったので、今後話し合う余地が大いに必要になりそうです。

個人的には、ろう者と難聴者には、特に音楽が好きな人と音楽に興味が湧かない人も半々いると思っています。単純に歌を聞くのが好きな人や、手話ポエムやミュージックビデオなど、視覚的に楽しめる音楽が好きな人など、同じ聴覚障害を持っていても、音楽との関わり方は様々です。

今回ワークショップは、「音」にこだわらず、障害の有無に関係なく、参加者みんなで楽しめる内容を目指しています。

現在の音楽は、音だけでなくライトやフラッシュ、映像など視覚的に楽しめる要素が増えている中、リーダーたちが考えるワークショップは、「振動」をメインとした内容を考えている様子が見られました。実際、振動が中心となる音楽ワークショップはあまり経験がないので、どういうワークショップになるのか楽しみです。

楽器や振動などで表現しながら 「こういう音が出たら振動もなったよ」と伝わる方法であれば、ろう者と聴者も、身体で「音」を感じて楽しむという感覚を得て、新たな音楽を共創できるのも面白そうかなと感じました。

このプロジェクトが目指すところとして、ワークショップを通した多様性のある音楽表現により、「音楽に正解不正解はない」ということを伝えていけると、ろう者も音の壁を感じることが少なくなるのではないかと思います。みんなで楽しめる音楽ワークショップを目指すように、振動、楽器、ビジュアル、それぞれ工夫しながら研究開発を進めていきたいです。


第2回全体研究会

実施日:2023年7月31日(月曜日) 
会場:東京藝術大学芸術情報センター(AMC)

開発チームが試作したデバイスを使用し、声やバケツなどの音の振動を体験、その問題点や改良点について討議した。音声と振動のタイムラグを解消すること、バッテリー寿命の延長、安全性の向上、そして振動の区別をより明確にすることが主要な課題として挙がった。


レポート執筆:多田伊吹

第2回研究会は、東京藝術大学の松浦さんが試作したデバイスを実際に使って音の振動を体験してみました。
検討したデバイスは、振動スピーカーを使います。振動スピーカーをつけたコップに、松浦さんがマイクを通して声を発したら、松浦さんの音声が振動になり、別のコップに伝わってきました。楽器にも装着し、叩くときのスピードや強さ、回数などを少し変えながら試してみました。その後、松浦さん、ワークショップ・リーダーの伊原さんと一緒に問題点や改良点などを話し合いました。

見えてきた今後の課題は大きく3つになりました。

  1. タイムラグ、バッテリーの改良
    今の段階では、声を発してから振動が来るまでの間が少し長めなので、音声と振動が同時に発生できる方法を実施する必要がありました。また、バッテリーの減少が早いため、一日は持つレベルのバッテリーを使用することが理想です。
  2. 子供でも使える安全性向上
    ワークショップの対象者のメインが子供になります。子供が使っても壊れない位の丈夫さ、耐性のあるものを制作する余地があります。また、見た目も「機械」を感じないようなビジュアルに近づけるために、布や箱などでデバイスの機械を隠す工夫をする必要があると話し合いました。
  3. 振動の違い
    実際にデバイスを体験してみて、音声や楽器から伝わってくる振動はほぼ同じだと感じてしまうので、ろう者でも楽しめるように振動にも区別があったらより面白くなることを共有しました。例えば、コップの中に入っているものとして、ネジや木の枝、消しゴムなど、硬いものや柔らかいもの、物による特性が振動にも関わっていると分かると、振動にも面白さを感じるのではないかと思いました。

ワークショップに参加する子供や大人が安全に楽しんでもらうためには、デバイスの利用性や、使うときの安全性も大切に考えています。今回の研究会で、色々挙げた問題点をさらに改良し、より使いやすいものを目指していきます。

体験会にて、試作デバイスについて話し合っている様子

開発チーム・ミーティング

実施日:2023年8月3日(木曜日) 
会場:CCBT

簡易的な方法で音声信号を無線で送信するための仕組みについていくつか検討。小型FMラジオでの伝送を試みたが、伝送距離が足りないことからより業務用のトランスミッタの利用を継続することに決定。また、音声を振動として体感するためのアクチュエーターの種類を増やす方針が決まった。


第3回全体研究会

実施日:2023年9月1日(金曜日) 
会場:東京文化会館

前回の課題を踏まえて改良されたデバイスを太鼓を含む複数の楽器に取り付け、振動による体験を検証。また、振動だけでなく、視覚的にも楽しめるアプローチについても検討した。その結果、ろう当事者からの支持を受け、ハンドベルの一種である「トーンチャイム」の音を体感できるデバイスを開発することが決定した。


レポート執筆:多田伊吹

今回は、前回のデバイスをさらに改良したものを使い、さまざまな大きさの太鼓などの楽器で試しました。太鼓を普通に叩くだけでなく、リズムで叩いたり、バチをいくつか変えてみたり、こすってみたりなど、さまざまなやり方で振動を体験しました。さらに、デバイスを付けた楽器の音をパソコンで録音し、あらためて再生し振動をつくることができるようになりました。

試作デバイスを装置した太鼓の振動を触って感じている様子。
記録した太鼓の振動を、サウンドシェイプで再現しようとしている様子。

振動では、バチを変えて叩いても違いはわからず、また、叩いた数ぐらいしかわかりません。ただ、録音した音を再生して振動をつくるやり方は、さっきまで叩いていた音が、今は叩いていないのに音・ 振動が出ていると演出することもでき、子供にとっては不思議で、面白い!と感じると思います。また、サウンドシェイプとギャザリングドラムから伝わってきた振動は、どちらかというとサウンドシェイプの素材がプラスチック系なので、より響きやすく、振動がはっきりと伝わってきました。

色々な楽器を試したなかで、印象に残ったのはトーンチャイムです。ワークショップ・リーダーの伊原さんと古橋さんのお話ですと、トーンチャイムはとても意見が分かれる楽器で、一般的にはろう者は楽しめないと言われているようです。トーンチャイムの音の特徴は、少し高めの音と長い響きとのこと。私にとっても今回初めての経験でした。トーンチャイムの振動はずっと続いていて、それが「響き」なのだと思います。ずっと「響き」を感じられるような響きの差があり、音が太鼓やサウンドシェイプなどとは違っていることが明確に伝わってきたと感じました。

トーンチャイムの響きを表現するアニメーションについて話し合い

また、松浦さんとCCBTの伊藤さんが即席で、トーンチャイムの長い響きに合わせて、パソコンの画面が白く光り、段々と消えていくようなアニメーションを作りました。それは、響きが長い補聴器や人工内耳などを使わない人でも、段々音が消えていくという動きが、視覚的に音を楽しめる点が良かったです。

ワークショップ・リーダーが検討しているワークショップのなかには、オランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホの《星降る夜》が登場します。そこで、この作品のように、トーンチャイムに星の絵を付けて、星を飛ばすといったイメージや、トーンチャイムを振るときのタイミングに合わせて画面が光るイメージなど、ワークショップにどう活かすかなど、色々話し合いました。トーンチャイムは音だけでなく、長い響きが振動となり、自分の身体にも伝わってきたので、音と振動、どちらも楽しめる楽器としてワークショップを通して、ぜひ皆さんにも経験してもらいたいです。
その他にも、傾きセンサからビジュアルへ変換するデバイスを、透明のレインスティックにつけて体験したりしました。

今回の研究会では、ワークショップ・リーダーや開発者の松浦さん、また、同じろう者のササ・マリーさんと話し合うことで、トーンチャイムが鳴いた時のパソコンの画面の動きや、傾きセンサによる画面の動きなど、音だけでなく絵や色、映像などビジュアルも楽しめるようなアイデアが多く出てきました。今後は、振動の使い方、パソコンの映像、トーンチャイムの使い方など、ワークショップのテーマや流れと合わせて考える必要があります。ろう・難聴者が「音」を楽しむ方法やみんなで楽しめる音楽ワークショップの形が徐々に見えてきた回になりました。

楽器群。左上からギャザリングドラム、左下、サウンドシェイプ、トーンチャイム、東京文化会館オリジナルの透明レインスティック
今回使用した楽器たち(左上から、ギャザリングドラム、サウンドシェイプ、トーンチャイム、東京文化会館オリジナル透明レインスティック)
アニメーションが表示しているノートパソコン
爆誕した試作したデバイス。トーンチャイムの響きに反応し、アニメーションが動く。

第4回全体研究会

実施日:2023年10月2日(月曜日) 
会場:CCBT

開発チームが試作したライトを用いたデバイスを全体で体験し、トーンチャイムの音の響きの減衰に連動するライトの変化を確認。ろう当事者より、トーンチャイムから感じ取れる振動とライトの変化が連動していることの面白さの指摘をふまえ、楽器操作の動きと光の連動による新たな音楽体験について協議した。


レポート執筆:榮咲季

第4回研究会では、楽器の響きと音の減衰に合わせた照明の変化を体験しました。トーンチャイムの特徴である長く続く響きに合わせ、トーンチャイムと照明ライトを接続し、音と光を連動させます。

トーンチャイムという楽器は金属でできた棒の形状をし、大きくて長いものほど低い音が鳴り、小さく短くなるにつれて高い音が出る仕組みの楽器です。1本1本それぞれにド・レ・ミと音がつけられ、棒に取り付けられたゴム製のハンマーを金属部分に打ち付けると、金属が震えて音が鳴ります。音が長く伸びていき、次第に消えていく、音の持続時間が長い楽器です。以前、「トーンチャイムのような金属でできている楽器の音は、ろう・難聴者には楽しむことが難しいのではないか」と指摘されたことがありました。今回は、楽器の音の特徴をビジュアル化することで、楽器が発する音の時間やその音の特徴、また演奏している様子などを共有することができるのではないかと、この楽器を取り上げてみることとなりました。

第3回研究会にて、開発チームの松浦さんと伊藤さんが、パソコンの画面上で、トーンチャイムの音の持続・減衰に合わせて動くアニメーションをつくりました。トーンチャイムの長く伸びる音や、音がだんだんフェードアウトしていく様子が視覚的に分かりやすく伝わり面白かったので、今回はライトに取り付けて体験します。

早速、トーンチャイムの金属部分にデバイスを取り付けてみます。使用するライトは2つのライトです。低音が出る大きなトーンチャイムと、高音が出る小さなトーンチャイムそれぞれのデバイスを、各ライトに接続し音を鳴らしてみます。

まずは低音のトーンチャイムを鳴らしてみると、デバイスが反応し、ライトが光りました。音が消えていくにつれ、徐々に光の強さも弱くなっていき最後には消える、トーンチャイムの音の特徴がそのまま光に表現されたように感じました。一方、高音のトーンチャイムでは、一瞬光り、すぐに消えてしまいました。接続の問題なのか、楽器の大きさが小さいがゆえの金属部分の振動の問題なのか、高音の特徴なのか。トーンチャイムならではの反応が今一つ見えづらい結果となりました。

いくつかのトーンチャイムに取り付け、同時に音を鳴らしてみると、デバイスが複数反応し、2つのライトが同じタイミングで光りました。一斉に光り、徐々に消えていく様子が、音だけではなく視覚的にも参加者で一緒に演奏しているような感覚がありました。

総合的な意見として、「楽器を鳴らす」行為と「音が照明となって表れる」という反応が連動し、見ていて楽しいという感想がありました。より発展させていくにあたり、ディスプレイに表示した方がより面白くなるのか、照明ランプなどシンプルな表現の方がより伝わりやすいのかなど、今後はトーンチャイムの音を表すツールをブラッシュアップしていくことが課題となりました。

今回の体験では、音の振動と光との連動により、トーンチャイムの音の特徴や一緒に演奏する様子が共有でき、見ていても楽しいとの結果となりました。見て楽しんでもらうことに加え、参加者にとっての好きな響き、心地よい響き、自分自身の体に馴染む響きを発見できると、その後の音に関する経験も広がりがあるのではないかという感想が印象的でした。また、一緒に演奏している感覚を得やすいことも分かりました。このことは、即興的なコミュニケーションを大事にしている東京文化会館のミュージックワークショップにおいて、重要なポイントになるのではないでしょうか。

これから、ワークショップ内で実際に使用するツールが、ライトなどの照明なのか、モニターに投影する映像になるのか、どのような手法をとることが一番面白くかつ分かりやすく体験、共有できるかということが課題になります。映像の可能性も探しながら、具体的なアウトプットの方法を見つけていきたいです。


開発チーム・アウトリーチ #1 (#筑波技術大学出張授業)

実施日:2023年10月24日(火曜日)
会場:筑波技術大学

デバイス開発に向けて当事者の意見や感想を聞くために、筑波技術大学の学生を対象にしたアウトリーチを実施。プロトタイプツールを体験してもらったことで、技術的な問題点としてノイズの管理や、参加者に提供する体験設計とデバイスのプロトタイピングにおける優先順位の見直しの必要性が明らかになった。さらに、ろう者や難聴者が音楽や日常生活とどのように関わっているかを深く理解することの重要性を再認識した。


レポート執筆:松浦知也

WSのためのデバイス開発をするにあたり、当事者の意見や感想を聞く機会として筑波技術大学の大杉豊先生に「きこえない人の生活文化」という授業2コマを使ってデバイスを学生の皆さんに体験してもらう機会を設けていただきました。筑波技術大学は日本で初めて聴覚・視覚に障害を持つことを入学条件とした大学で、授業の参加者は(程度の差はありますが)ろう・難聴者です。日程の都合上、研究協力者であるワークショップ・リーダーの皆さんが参加することが叶わなかったので、主に松浦が主導で授業を行いました。

撮影協力:大杉豊教授

1回目の授業では、前置に松浦自身が今回のデバイス開発に取り組んでいるモチベーションとして、「聴者の立場から考える空気振動以外の音楽」というテーマで短いレクチャーをしました。

(この内容は加筆し始めたら非常に長くなってしまったため、また後日別の形で公開できればと思っていますが)、20世紀以降の現代音楽がいわゆる「音楽の3要素(メロディ・リズム・ハーモニー)」に収まらない多様な表現を追求してきたこと、その一方で、音響メディア技術は空気の振動=電気の波として記録、流通販売が可能な形へ規格化が進んだこと、クリストファー・スモールの「ミュージッキング」のように、作曲や演奏にとどまらない音楽に関わる営為全般を「音楽すること」として捉え直すような考え方が出てきたことなどを紹介しました。

その上で、前回まで試していたトーンチャイムの音量をクリップライトに反映させるデバイスのプロトタイプを参加者の皆さんに体験してもらいました。
今回は、前回2本だけだったトーンチャイムのデバイスの数を8台まで増産しました。

いくつか使ってもらう中で、まず技術的に問題だったのは前回と同じくコンタクトマイクの拾うノイズで、実際に音が鳴ってなくてもマイクの付近を触ったり、机から取り上げただけでライトがチカチカと光ってしまうことでした。チャイムとライトの本数が増えていくほど、誰も演奏してないシーンでひとつでもライトがチラつく頻度が上がってより気になってしまう問題もありました。
コンタクトマイクで音量を検出して映像や光情報に変換する手法は、メディアアートの世界では使い古されたありふれたものです。そうしたデバイスのプロトタイプをするとき、ノイズの抑制のようなわかりやすいエンジニアリングの課題は制作の終盤で潰せば良く、先に全体の体験設計に注力すべきだと考えてしまいがちです。しかし、コンタクトマイクのノイズが「ノイズであること」をあらかじめ知っているのは聴者に限られます。この光の明滅がトーンチャイムの音なのかそうでないかを変換後の光だけを見て判断する場合はどこまでがノイズか区別し難く、「この光の減衰が聴者の聴くトーンチャイムの音量である」という体感が共有できなければその先の体験や演出の制作にはたどり着けないのかも…という、デザインやプロトタイピングの優先順位を考え直すきっかけになりました。

またその上で、技術的な問題以上に、単に「こういう技術があるんだけど、どう感じる?これを使って(例えばWSのプログラムなどとして)何ができると思う?」という問いを投げかけても答えに窮してしまうことが反省点となりました。今回のデバイス開発に限らず、エンジニアやテクニカルディレクター的な立場でコンテンツ制作に携わると、あるコンテンツのための問題解決に技術を用いるか、技術ありきのコンテンツ制作の間でニワトリが先か卵が先かの問題がよく発生します。そして、そういう時の原因は大概お互い普段何を考えているか知らず、共通のボキャブラリーが存在していない時だったりします。

今回のデバイス開発はエンジニア、音楽家(WSリーダー)に加えて、ろう・難聴者とさまざまな立場の人が関わる中で、「どんな体験が作れたら面白いだろうか?」の前にまず、ろう・難聴の人々が持つ音楽への印象や、体験してきたエピソード、生活との関わり方のような具体的イメージへの解像度をまず高めないことには先に進まないのではないか?、そして、それはおそらく当事者同士でも意識的に話す機会は実は少ないし、この人数で体験を共有することはお互いの差異を認識することにもつながるのではないか?という結論に至りました。


第5回全体研究会

実施日:2023年11月6日(月曜日) 
会場:CCBT

筑波技術大学アウトリーチの様子について松浦氏から、また同行していたSasa-Marie氏から報告し、ろう・難聴の学生が「楽しんでいた」様子が見受けられたことを共有。ろう・難聴の学生の反応と、ろう当事者でもあるSasa-Marie氏と多田氏の意見を踏まえ、開発中のデバイスの発展方針を協議。ろう者が「視覚を重視する人々」とされることから、ライトの色使いや動的な視覚表現の組み合わせに焦点を当てたデバイスの必要性へと議論は展開し、あわせて、子どもたちの想像力を刺激するデバイス開発の可能性についても検討した。


レポート執筆:多田伊吹

第5回研究会は、ディスカッションを通じて、デバイスをどのように発展させるかや、音楽の感じ方について話し合いました。

これまで話し合ってきたデバイスは、「ドレミファソラシド」の音に合わせて、8 個のライトを音楽デバイスとして利用できるよう備えるものでした。プロジェクトメンバーからの質問の中で、「ライトを見るときと映像で光っているアニメーションを見るときと、どう違いがあるのか?」と聞かれました。私自身、これまでそういうことを意識したことがなかったため、興味深い質問でした。あらためて振り返ると、ライトは元々「光るもの」として認識しています。光っているものと認識しているからこそ、色付きや光り方によってはより綺麗に見えると感じています。一方で、ディスプレイの画面で見る映像、そのなかでも、光が段々と暗くなっていくアニメーションは、3回目の研究会のとき初めて見たからこそ驚きもあり、同時にクリエイティブな表現としても分かりやすく感じました。ライトと映像、どちらもメリットがあるので、使う場面によってはどういう方法が最適なのか考えることも必要かもしれません。

また、別のメンバーから、「ドレミファソラシドに色を付けるのは避けたい。色を入れると私たちが色を決めつけることになってしまうから、子どもたちには自由に色を想像してもらいたい」という意見が出ました。これも興味深い意見でした。自分の経験としては、小学生の授業で「ドレミの歌」を、声を出しながら手話で歌ったことがあります。歌詞の中には「レはレモンのレ」「ソは青い空」などの表現があり、そこから自然と色のイメージがついていたのかもしれません。

出身校では、ハーモニカの鍵盤の上に、ドレミファソラシドの色付きシールを貼っていました。これは、どの鍵盤を押した時にどの音が出るのかをわかりやすくするためです。ドレミファソラシドの順に鍵盤を押すとき、低い音から高い音へ変わっていくところは音程や指の振動で分かります。しかし、どれがミの音なのか、ラの音なのかは、白い鍵盤を押して出る音だけを聞いても全く分かりません。鍵盤にシールを貼ることで、シールという視覚的な情報を頼りにしながら鍵盤ハーモニカを弾くことができました。ドレミファソラシドがそれぞれ違う音だからこそ、その違いを知るために音の要素と「色」を関連づけられることが、小学生の自分には分かりやすかったのだと思います。

もし私が、今企画しているミュージック・ワークショップを体験したら、光っている全てのライトが同じ白色の場合は「全部同じ音」、色が異なっているライトの場合は「それぞれ違う音」といったように捉えるかもしれません。個人的には、視覚的に楽しめる点と低年齢のワークショップ参加者の興味を引き付ける点に加えて、音には正解不正解のないカラフルな表現であることを踏まえると、ミュージック・ワークショップには、光だけでなく色の要素もあった方が楽しめるのではないかと考えます。そのため、メンバーの「子どもたちの想像力を大切にするために、特定の音に特定の色をつけず、自由にさせたい」という考え方は意外であり、大変勉強になりました。

その他にも、ワークショップで全体の進め方のイメージや、アニメーションやライトなど使用するデバイスの活用方法、トーンチャイムと音楽デバイスを組み合わせてどのように参加者に体験してもらうかなど、細かい点まで話し合いました。今回は、デバイスの試験的活用がメインであったこれまでとは異なりディスカッションが中心であったため、メンバーから質問や意見から、自分の考え方を見直す機会となりました。今後様々な場所で行われる音楽体験会にも参加し、何か新たな発見ができたらと考えました。


開発チーム・ミーティング

実施日:2023年11月20日(月曜日)、 11月24日(金曜日) 
会場:オンライン(Zoom)、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

10月アウトリーチを踏まえ、第2回アウトリーチをどのように進めるかを開発チームで検討。受け入れ先である筑波技術大学・大杉教授とも協議し、授業内容の方向性、学生への要望などを整理した。


開発チーム・アウトリーチ #2(筑波技術大学 出張授業 #2

実施日:2023年11月28日(火曜日)
会場:筑波技術大学

ろう・難聴者の音楽体験の一端について知るため、「あなたの印象的な音楽体験は?」というテーマでワールド・カフェ形式で話し合いを実施。学生からは、世代差やテクノロジーが音楽体験に与える影響や、多様な音楽関連の話題が挙がった。補聴器や人工内耳とスマートフォンの連携が音楽体験に新たな可能性をもたらしていることが明らかになった。


レポート執筆:松浦知也

前回の反省点を踏まえ、11月の授業ではデバイスの体験の要素は一旦横に置いておくことにして、

「あなたのこれまでの生活のなかで、一番印象的な音楽にまつわる体験·経験はなんですか?」

という質問をもとにして、ワールド・カフェ形式*で音楽にまつわるエピソードをとにかく沢山話してもらうことにしました。

個人的な経験内容を多く含むので具体的なエピソードはここでは割愛しますが、印象に残ったのはわずかな世代の差でも大きく音楽の経験に差があることと、またそれが補聴器や人工内耳といったテクノロジーに大きく左右されていることでした。

これまでの研究会の中で多田さんやマリーさんから、ろう当事者の中には小学校の頃の音楽教育の影響もあって音楽自体にネガティブな印象を持つ人も少なくない、という話をしていたのですが、今回の授業の受講生の人はそれほど音楽にマイナスなイメージを抱いている人は少なく、友達と一緒にカラオケに行く人や、好きなアーティストのライブを見にドームへ行く人などの話も聞きました。

話を聞いていると、ここ数年でスマートフォンと補聴器や人工内耳をペアリングして、マイクによる増幅を経ずに直接音楽を再生することが可能になったのも、音楽体験の違いに影響を与えているようでした。完全ワイヤレスイヤホンやスマートフォンの普及と共に、メディア装置としての補聴器や人工内耳の技術要素が聴者のためのメディア装置のそれとオーバーラップするようになってきているのです。

授業後の振り返りで多田さんたちと話す中で、小学生やそれより下の世代の人工内耳装着率はかなり高くなってきているという話も聞く中で、自分がこれまでこのプロジェクトの下調べとして、ろう者のための音楽体験デバイスのような情報保障的な考え方による取り組みには着目してきたものの、そうした取り組み以上に、すでにろう者が補聴器のような技術インフラを通じて既存の聴者中心の音楽文化に参加している現実もまたあるのだと気づきました。

無論、ろう・難聴に対する周縁化や疎外は至る所に残っているものの、「何か情報を加えなければろう者は聴者の音楽文化に参加できないだろう」というオーディズムが自分の中に残っていることを認識させられることとなりました。

さて、では今回作ろうとしているWSの対象である、5歳から小学校低学年のような、まだ既に聴者中心の音楽文化に触れてないかもしれない相手に提示する「音楽」体験とは如何なるべきか、という問いに関してはますます考え込むばかりです。これからのWSの実施を通じて、長い時間を掛けてでも答えを探す必要のある問いだと感じています。

*ワールドカフェ:あるテーマに沿って5~10分ごとにグループのメンバーを入れ替えながら対話を続けることで内容を掘り下げていくワークショップの一つの方法

撮影協力:大杉豊教授
撮影協力:大杉豊教授

ノート執筆:多田伊吹

前回、10 月に筑波技術大学の食堂で行われた体験会には参加できなかったため、今回初めて大学 2 年生の授業で音楽デバイス開発プロジェクトの一環として実施する体験会の様子を見た。前回は実際に音楽デバイスの体験をメインに取り組んだが、今回は座学で松浦さんが音を伝えるためのテクノロジーについてお話し、その後、4つのグループにわかれディスカッションを行うといった流れで進んだ。

トークでは、「エンジニアの立場から見る音楽のためのテクノロジー」をテーマに、「Techtile Toolkit」という、マイクで振動を拾いアンプを通してスピーカーを鳴らすという音楽デバイスの仕組みについてや、音程やリズムなどデータを空気圧から電気信号へ変換し、聴覚や視覚に伝えるまでの流れや、伝えるためのデータの種類などについて、詳しく説明いただいた。内容がエンジニアシステム分野であったため、常にデザインを学んできた自分にとっては少し難しく感じたが、音を振動に変えたり、音に合わせて色や模様を画面に表したりなどが可能な「TouchDesigner」というプログラミングソフトは、デザイン授業で利用したクリエイティブプログラミングとはまた違ったソフトのため、こういう方法で音に関する制作ができる点については、より面白く感じた。

また、筑波技術大学の春日キャンパスには情報システム学科があるので、このようなプログラミングには興味が湧く学生がいるかもしれないと思った。最後に、たまごの振動を感じるデバイスや、音楽を視覚と触覚で楽しめる 「サウンドハグ」、1990年代の音楽デバイス「タクタイルボコーダー」などが紹介された。どれも面白いデバイスで、ぜひ多くのろう・難聴者にも知ってほしい情報の 1 つである。昔にも指で触れる振動デバイスが作られていたことは今回初めて知ったため、興味深い内容であった。また、自分は音楽を体験するとき、触覚で振動を体感したり、視覚で光や映像などビジュアル的な表現を楽しんだり、などを実感していたが、様々な人が音楽を楽しむためには、音をデータに変えてプログラミングを作成することも必要なので、エンジニアの立場も大変重要であると、あらためて考えさせられた時間であった。 

レクチャーが終わった後のディスカッションでは、「日常生活で、一番印象的な音楽にまつわる体験・経験について」をテーマとし、学生 3〜4 人からなるグループを 4 つ作り、ワールドカフェの形式で話し合いを始めた。松浦さんや、プロジェクトメンバーが手話通訳を介して学生同士の話し合いを聞いたり、学生に質問をしたりするなどグループのディスカッションに参加し、学生と対話をしていた。

印象的だったのは、学生の大半が音楽を聴いており、邦楽や洋楽など好みに分かれていたこと、聴き始めた時期が様々だということ、補聴器や人工内耳、耳の形などに合わせて利用する音楽機器も変わることなど、一人ひとり音楽に関する好みや考え方のニーズを持っていることを知った。なかには、機器から出ている音楽は本物の音楽だろうか?という疑問から音楽を全く聴かないという強い意思を持っている学生もいた。自分の周りでは音楽を聴くろう・難聴者は少なかったので、実際に多くの意見を聞けて大変参考になることが多かった。

一方で、授業の後、スマートフォンや手持ちの音楽機器で十分に音楽を楽しむ人が多いため、音楽ホールに行く意味を問われるという課題が出たことをメンバーと話した。音楽ホールならではの魅力と併せてワークショップの宣伝をすることが、音楽デバイス開発プロジェクトに必要なことかもしれないと考えた。今回の体験会では、実際にエンジニア視点の音楽についてと、学生のディスカッションから出た音楽との関わり方など、様々な視点を学べた貴重な時間になった。


第6回全体研究会

実施日:2023年12月25日(月曜日) 
会場:オンライン会議(Zoom)

インタラクティブ映像システムについて協議。映像作家である薄羽涼彌氏に協力を仰ぎ、開発するシステムについてのイメージや方向性を共有。また、ろう当事者における映像の視覚的効果や期待することについて全体で共有した。


第7回全体研究会

実施日:2024年1月8日(月曜日) 
会場:CCBT

改良したライトのデバイスを確認。参加者がライトの光を直接見ることなしに減衰を実感する方法など、装置のかたちや設置方法における工夫点を検討した。


第8回全体研究会

実施日:2024年1月25日(木曜日) 
会場:東京文化会館

ライト装置の検証・確認

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開発チーム・検証(東京文化会館アウトリーチプログラム随行)

実施日:2024年1月30日(月曜日) 
会場:大塚ろう学校城東分教室

東京文化会館アウトリーチプログラムに参加し、実際に開発中のデバイスをろう・難聴の児童が体験している様子を確認。また、振り返りにて、ライトに色を組み合わせることについて協議した。


第9回全体研究会

実施日:2024年2月7日(水曜日) 
会場:CCBT

ライトの色の検討。事前にDiscordで共有していたインタラクティブ映像についても協議し、変更点について共有・確認を行った。


第10回全体研究会

実施日:2024年2月21日(水曜日) 
会場:東京文化会館

ライトおよびインタラクティブ映像におけるシステムの最終確認。また、東京文化会館が企画しているミュージックワークショップへの活用に向けて微調整の箇所を確認した。


レポート執筆:多田伊吹

今回の研究会では、アニメーションの確認・ライトの配置確認などを行いました。

今回の研究会が行われる前に、試作段階の映像がDiscordで共有されていました。そこでは、8個の球体が1か所に集まり、音に合わせて風船みたいに膨らんだり、震えながら萎んだりするなどの動きがありました。風船のような可愛らしさのあるフォルムで、手に伝わる、トーンチャイムを鳴らす度大きくなる振動と、音が段々と消えていくことで小さくなる振動の比喩表現が分かりやすいと感じました。また、球体だけでなく音によって画面の色が変化していく動きからも、ポップ系で賑やかな印象を抱きました。

しかし、今回の研究会で実際に見た映像では、ワークショップ・リーダーの意見や要望を踏まえて、構図や雰囲気などを作り変えたものでした。新たな映像は、トーンチャイムを振るたびに目の前の画面に〈泡〉みたいなものが現れ、全方位に広がり、段々と消えていくアニメーションでした。トーンチャイムには、音を鳴らした時に長く響き、少しずつ消えるという特徴があるといいます。そのため、トーンチャイムに抱いていたイメージがアニメーションと合っていて、分かりやすく表現されていると感じました。8個の音ごとに色が異なっており、同時に鳴らすと音の〈泡〉が重なり、花火のように綺麗なモーションに仕上がっていました。ワークショップ・リーダーから、トーンチャイムを連続で振る場合の動きを追加できるか、〈泡〉が出る配置をより見やすいようずらせるか、など色の明度・彩度の変化を含めて、細かな調整・修正などを話し合っていました。

私がこのインタラクティブ映像を見た時、雰囲気応援可視化システム「ミルオト」に似ていると考えました。ミルオトはデフリンピックに向けて開発されたテクノロジー技術であり、ボールの音や選手の足音、観客の声など試合中のその場の雰囲気・応援をリアルタイムに可視化するオノマトペ表示システムです。このシステムによって、試合会場やオンライン観戦でも、競技の雰囲気や応援のエネルギーをオノマトペとして捉え、大型スクリーンやオンラインでの画面に映し出すことで、聴覚障害者でも試合をビジュアルで楽しむことができます。つまり、「ミルオト」はスポーツのために作られたものです。今回開発しているインタラクティブ映像のデバイスは、音楽ワークショップに向けて開発しているものですが、リアルタイムにトーンチャイムの音を可視化できる点が似ているのではないかと感じました。〈泡〉だけでなく、カタカナやひらがななどを取り入れて、文字を理解できる子どもにはオノマトペで様々な音を表現できるようなシステムへ発展すると、より音楽へ関心を持てるような環境作りが可能になるのではないかと考えました。今回のアニメーションは色々工夫すれば、さらに他のワークショップでも多様なニーズの使い道があると考えます。

映像を確認したあと、ワークショップ・リーダーが中心となって、8個のライトの色や配置などを、全体のバランスを見ながら並べ替えたりカバーを付け外したりして確認した。その際、ライトと映像どちらも使う時、子どもが「トーンチャイムを振ったらこの色が出た」と理解できるよう、ライトと映像では同じ色にするか〈泡〉の配置をライトの配置に合わせるか、などの工夫があった方が良いことを提案しました。その後、全体を通して、アニメーションの動作とライトの配置に対して細かな確認を行った。3月3日(土)に実施するワークショップに向けて、今回インタラクティブ映像について話し合ったことを、開発チームで少しずつ改良していきます。

*雰囲気応援可視化システム「ミルオト」公式ウェブサイト 


開発チーム研究会・アウトリーチ#3(あ〜とん塾)

実施日:2024年2月23日(金曜日・祝日) 
会場:あ〜とん塾

ライトおよびインタラクティブ映像の検証を兼ねて、ろう児を対象にした放課後等デイサービス、手話で生きる子どもの学習支援「あ〜とん塾」へのアウトリーチを実施。「あ〜とん塾」に通う小学生7名とクルー(職員)3名、合計10名にデバイスを体験してもらい、参加者の反応や操作方法、また事前準備の手段や準備にかかる所要時間などを確認した。


レポート執筆:多田伊吹

今回は、あ~とん塾に通う児童学生を対象に、開発してきたデバイスの検証を兼ねた音楽ワークショップに立ち会いました。「あ~とん塾」は、ろう児(手話を第一言語とする聞こえない子ども)とろう者&手話を使うスタッフが共に安心して生活・勉強する居場所です。そこに通う児童を対象に、ライトと映像を用いた音楽ワークショップが実施されました。参加者は低学年から高学年まで年が離れている子が集まり、全員が手話を主に使っています。

ワークショップは、最初にライトを、次に映像といった流れで進みました。まずは子どもたちに自由にトーンチャイムを振ってもらい、次に、どのライトが自分の担当なのか(自分のトーンチャイムに反応するのか)1人ずつ答え合わせをしていくきました。この方法は、自分や仲間がどのライトを点灯させるのか、映像であらわれる〈泡〉を動かすのかを確認する、分かりやすくて良い方法だと考えました。

子どもたちが一斉にトーンチャイムを振っている様子を見た時、ふと「8音全部出た時のトーンチャイムの音は綺麗に聞こえるのだろうか」と疑問に思い、一緒に見学していた聞こえるプロジェクトメンバーに尋ねてみました。その結果、「綺麗な音ではなく、乱雑な音に聞こえる」「音が混ざっているので、人によっては綺麗には聞こえない」との返答でした。個人的には、アニメーションの8つの音が〈泡〉のように重なって広がっていくモーションが美しいため、音も綺麗だろうと思い込んでいました。そのため、実際はそうではないという真実を知った時は、とても驚きました。ただ、「不協和音ではないから個人的には不快には聞こえない」というコメントもありました。音楽ワークショップのプロジェクトを進め始めた時、「音楽に正解不正解はなく、みんなで楽しめるものを作りたい」という意見があったことを思い出しました。、聞こえるメンバーにも聞こえ方も様々であることと同時に、音楽との関わり方や楽しみ方にも1人1人のニーズがあるだろうと考えました。まず聞こえ方は別として、自分がトーンチャイムを振ったらライトや映像の〈泡〉が光ったという仕組みを理解したうえで、体験を通して音楽に触れて楽しむことが大切だと考えます。自分は綺麗なアニメーションだから音も綺麗にちがいないと思い込んでいましたが、もし機会があれば、綺麗な音かどうかは関係なく映像を綺麗なビジュアルにするか、又は、綺麗な音ではない時はお互いの〈泡〉が強くぶつかり合う、音の聞こえ方に合わせたビジュアルにすることで、より音にも綺麗な音とそうではない音があることを伝えるなど、を検討してもいいと考えました。どちらがいいか、今後音楽ワークショップで音をどう表現するかを話し合うときに、聴者の考えも聞いてみたい。個人的には興味のある課題でした。

ワークショップでの児童の様子では、ライトより映像の方が、彼らの興味関心はより強いと感じました。おそらく、ライトの場合は、最初から「ライトは光るもの」だと認識しているため、それが光ったとしても新鮮な感覚はあまり湧かないと思います。一方映像の場合は、何が出てくるか予想がつかないことから、トーンチャイムを振ったら〈泡〉が出た時の驚きと楽しさがライトよりも増したのではないでしょうか。実際、高学年のふたりがトーンチャイムを見た時、「前に学校でやったことがある」と会話していたが、感想を聞いた時「前やっていた時よりも楽しかった」と回答した。飽きることなく最後まで楽しめたという成果は、映像の綺麗さ、面白さに惹かれていたという結果から得られたと考えました。参加した児童のほぼ全員から「映像の方が綺麗で好き」という声が多く聞かれ、ろう児が音楽を楽しむときの映像の必要性を感じた音楽ワークショップでした。


第11回全体研究会/ミュージック・ワークショップ「不思議なミュージアム」

実施日:2024年3月3日(日曜日) 
会場:東京文化会館

東京文化会館の国際連携企画の1つ、ミュージック・ワークショップ「不思議なミュージアム」を実施。ワークショップの構成のうち1部パートで開発デバイスを活用し、最終的な検証を行った。

ワークショップには、ろう・難聴・聴の子供たちと家族が参加。「視覚的に音がひとりひとり見えるのがよかった」というコメントが参加者から寄せられるなど、ライトとインタラクティブ映像による視覚的な楽しみ方を参加者に体験させることができたと考える。また、同伴者から「目で見て楽しむ音楽の楽しみ方がある」という感想が寄せられたことから、ろう者の楽しみ方を聴者に伝える機会になったこと、見える音を介し聞こえる親と聞こえない子どもの新たなコミュニケーションを生み出すことに貢献できた。

イベント詳細:東京文化会館ミュージック・ワークショップ「不思議なミュージアム」


レポート執筆:多田伊吹

 ろう・難聴、聴の子どもが対象である東京文化会館ミュージック・ワークショップ「不思議なミュージアム」が、東京文化会館で開催された。沢山の親子が参加されており、そのうちの2グループがろう・難聴の子どもであった。これまでの集大成として、ワークショップは、打楽器の紹介から始まり、ライトと映像によるトーンチャイム体験、最後にまたさまざまな国の伝統的な楽器の流れで進行された。

 「不思議なミュージアム」は、国内外の珍しい楽器を子どもたちに体験させ、楽しんでもらうことを目的としたワークショップです。最初にファシリテーターであるワークショップ・リーダーの自己紹介とワークショップについて説明があり、その後「ジェンベ」や「サウンドシェイプ」という打楽器が登場しました。手をジャンベの底から中に入れて叩いたときの振動を感じたり、それぞれがサウンドシェイプとバチを持って叩きながらお互いに振動や音を伝えあったりしました。その後、トーンチャイムが登場し、トーンチャイムを振ってライトをつけたり〈泡〉を飛ばしたりして、さまざまな楽器体験をしました。

 子どもたち皆振動を感じた時の反応がとても良く、ろうの子が「振動きた!腕(身体)に響いてきた!」と手話で話していたのが、印象的でした。時々、親が「トーンチャイムのこの部分を握ると音が止まるよ、分かる?」「どこから音が来たか分かる?ここから来ているよ」と、音の仕組みや音の発生場所を教えたり、子ども自身も「今の音聞こえたよ!」と自ら感じたことを伝えたり、など親子のコミュニケーションが取れている様子が見られました。、他にも、子供が「この楽器、音するよ!やってみて!」と大人に楽器を渡すシーンも多く見られ、音楽ワークショップを通して親子との会話が深まる点もメリットであると感じました。先日のあ~とん塾でも、児童と先生、つまり、子供と大人同士で楽器の共有ができていて、子供だけでなく大人も楽しめるワークショップ内容だと考えました。

特に障害に関係なく親子ともに反応が良かったのは、アニメーションのパートでした。子どもたちがトーンチャイムを振った途端に〈泡〉が画面に表示されたとき、子どもだけでな大人も良いリアクションがあったように感じました。ろうの子どもがずっと「楽しい」と言い続けてる姿や、聴者とろう・難聴者ともに途中で飽きることなくずっとトーンチャイムを振りながらライトや映像に夢中になっている姿を見て、心から音楽ワークショップを楽しんでいることが伝わってきました。

1つ発見したことは、ろう・難聴の子どもと聴の子どもの動作の違いです。ライトの場面では、参加者の1人がライトの後ろにまわってみんなの前に立ち、まるで指揮者になったようにライトを順番に差し、それに合わせて他の子がトーンチャイムを振るというパートがありました。、聴の子どもはトーンチャイムの音が消えてから次のライトを差していましたが、ろう・難聴の子どもは、音が消えるのを待つのではなく次から次へとライトを指差していました。もしかしたら単純に好みなだけかもしれないですが、個人的に音の感じ方は異なっているという発見が視覚的に感じ取れました。



アニメーション映像では、あ〜とん塾のときはまだ改良段階であった、トーンチャイムを小さく振ると〈泡〉も小さく、大きく振ると〈泡〉が大きくなる、連続で振ると〈泡〉も連続で続いていくなど、振る力や動作によってアニメーションも分かりやすい方向にアップデートされていました。「振る力でアニメーションが変わる」といった説明は尺の問題からかありませんでした。しかし、、もしその説明がありその仕組みが分かれば、子どもたちもただ振るだけでなく様々な振り方を試すことができて、より面白さを感じると思いました。、当日は、テクニカルスタッフも本番直前まで色々調整していたので、説明・紹介することで、少しでも効果を活かす必要があると感じました。

音楽ワークショップ終了後、参加者からコメント・感想をいただきました。その中に、「今までは音楽というものは耳で楽しむイメージがあったけど、このワークショップに参加して、聞くだけでなく目と身体で楽しむものだとイメージが変わった」という声がありました。、自分がろう者の立場として、音楽は耳の他、目や手など身体で感じ楽しむものだと思っていたので、同じ感覚を共有できたのが嬉しかったです。「不思議なミュージアム」は、「耳で音楽を楽しむ」という音楽の前提から「目で・身体で音楽に触れて楽しむ」という新しい考えに気付かされるワークショップであると考えました。それがろう者・難聴者・聴者がともに、体感できたことが大きな成果といえると考えます。

撮影:鈴木穣蔵
Music Program TOKYO Workshop Workshop! 国際連携企画
東京文化会館ミュージック・ワークショップ「不思議なミュージアム」(2024年3月) 
提供:東京文化会館


開発チーム・オープン化にむけた打ち合わせ

実施日:2024年4月15日(月曜日) 
会場:CCBT

2024年度に入り、開発したトーンチャイムから光および映像に変換するデバイスのソフトウェアとハードウェアのシステムを、第三者が一定の範囲で自由に利用できるようオープン化する方向性を検討。CCBT YouTubeチャンネルにアップロードすることを前提に、制作する解説動画の長さや必要要素を洗い出すとともに、情報保障支援(日英言語、文字情報、日本手話)について検討。


開発チーム・オープン化にむけた打ち合わせ②

実施日:2024年6月5日(水曜日)
会場:CCBT

Githubにて公開するドキュメント内容の確認と、あわせて制作する動画内容および撮影スケジュールを検討・調整。


開発チーム・解説動画撮影

実施日:2024年6月17日(月曜日)
会場:CCBT

動画コンテをもとに動画2本分の撮影を実施。


開発チーム・手話動画撮影

実施日:2024年6月23日(日曜日)
会場:東京藝術大学芸術情報センター(AMC)

動画コンテをもとに手話動画を撮影。本事業に密に関わっていた多田さんが出演。専門用語の手話や、ろうの視聴者に伝わりやすい表現は何かを中心に、手話通訳者と共に話し合いを重ねながら撮影を実施した。


開発チーム・開発デバイスシステムの公開

実施日:2024年6月30日(日曜日)

ソフトウェア開発のプラットフォーム「GitHub」にて、ドキュメンテーショとシステムを公開。

https://ccbtokyo.github.io/visvib-manual/


プロジェクトについて

シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]の大学や研究機関との連携事業の一環として実施している「音楽デバイス開発プロジェクト」は、「音楽の新しい捉え方や共有方法の共創」をテーマに推進するプロジェクトです。インクルーシブ・デザインを軸に、さまざまな身体的特徴や文化的背景、考えを持つ人々の協働を通じて新しい芸術文化の楽しみ方を探求しています。

CCBTと東京藝術大学芸術情報センター、東京文化会館、そして、ろう・難聴者と共に実施しています。音の可視化や触覚技術、情報視覚化技術を活用し、音楽体験の新しいかたちを模索し、実現するデバイスやコンテンツの開発に取り組んでいます。また、開発したデバイスをオープンソースとして公開・発信することで、より多くの人の手に渡り、そこから新たなデバイス開発へと繋がるコミュニティを形成すること、ろう・難聴者の音楽体験の価値を高め、その体験を通じたコミュニケーションの可能性を拡げることを目指します。

※本プロジェクトにつづくプレ研究会として、2023年2月14日にCCBTにて「ワークショップのための技術体験&研究会」を実施しました。その様子は、東京芸術大学芸術情報センターLABウェブサイトにて公開されています。
参考記事:
AMC Connect AMC + CCBT + 東京文化会館」(芸術情報センターLABページ)

プロジェクトメンバー

2023年度

デバイス開発チーム
音センサーシステム開発:松浦知也(SoundMaker、東京藝術大学芸術情報センター特任助教)
映像システム開発:薄羽涼彌(映像作家、ゲーム開発者)
伊藤隆之(シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]テクニカルディレクター)
イトウユウヤ(テクニカルディレクター/arsaffix)
三浦大輝(エンジニア/株式会社オモローグ)
多田伊吹(CCBTインターン(2022-23年)/ろう者)

ワークショップ開発チーム
伊原小百合(東京文化会館ワークショップ・リーダー)
坂本夏樹(東京文化会館ワークショップ・リーダー)
櫻井音斗(東京文化会館ワークショップ・リーダー)
古橋果林(東京文化会館ワークショップ・リーダー)
Sasa-Marie(SignPoet(手話による「てことば」で詩を紡ぐ人)、ミュージック・アクセシビリティ・リサーチャー/ろう者)

コミュニケーション支援(日本手話言語⇔日本語)
石川ありす
篠塚正行
小貫美奈(筑波技術大学)
ほか

プロジェクト・マネージャー:
鹿島萌子(CCBT)
榮咲季(東京文化会館)

プロジェクト・ディレクター:
伊藤隆之(シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]テクニカルディレクター)
梶奈生子(東京文化会館事業企画課課長)

2024年度

システム公開
ディレクション:松浦知也
出演・手話通訳:多田伊吹
映像撮影・編集:野口羊
手話動画監修:篠塚正行

プロジェクト・マネージャー:
鹿島萌子(CCBT)

プロジェクト・ディレクター:
伊藤隆之(シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]テクニカルディレクター)


連携先

東京藝術大学 芸術情報センター(Art Media Center:AMC)
日本で唯一の国立総合芸術大学である東京藝術大学において、全学に向けた情報インフラストラクチャの整備運用、情報メディア技術に関わる教育研究活動、創作支援のためのAMC LABの運営を行っている。AMC LABやAMC開設授業は、学部・学科を超えた交流の場としても機能しており、近年では「AMC Connect」として学内外の組織のハブとして、より多様なコラボレーションを展開している。

東京文化会館 Music Program TOKYO「Workshop Workshop! コンビビアル・プロジェクト」
アートによる多元的共生社会の実現を目指し、年齢や障害、社会的ハンディキャップのあるなしにかかわらず、あらゆる人々が音楽鑑賞や音楽創造体験に参加できる機会の提供や、多様な人々が新たな文化創造に主体的に関わることができる環境の整備を目指し、2017年度より様々な取り組みを行う。特に、人々の音楽創造体験への参加の点においては、特別支援学校や社会福祉団体などと連携し、あらゆる立場の人が音楽や楽器に触れながら、自己表現能力やコミュニケーションを深めることができる音楽ワークショップを展開している。




多田伊吹さんの笑顔の写真。
写真:佐藤基

多田 伊吹Tada Ibuki

生まれつき(先天性)聴覚障害があり、主に手話でコミュニケーションをとる。筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科 支援技術学コースを卒業。障害のある人々や高齢者が生活する中で生じる不便な点に配慮する機器のデザイン、及び障害者が求める支援についての理解を高めるためのデザインなどを中心に、誰もが利用しやすいデザインの知識を習得中。2022年度から2023年度まで、CCBTインターンとして参画。ろう当事者の視点から、ろう者・難聴者がイベント等プログラムに参加し楽しめるための情報保障支援やワークショッププログラムの企画・運営・広報や、大学連携事業「音楽デバイス開発プロジェクト」に従事。

【主な実績】
「360°図鑑 in CCBT(手話通訳付き)」
アート×テックラボワークショップ005「Deviation Game ーAIと競争&共創する」
「「Embodiment++」ギャラリーツアー(言語:日本語対応手話)」
CCBTと大学・研究機関との協働事業「音楽デバイス開発プロジェクト」
ほか、ワークショップシリーズ「ひらめく☆道場」、CCBT Meetup など

榮咲季Sakae Saki

東京文化会館

上野学園大学にてアート・マネージメントを学ぶ。公益財団法人東京都歴史文化財団東京芸術劇場が実施する若手演奏家育成事業「芸劇オーケストラ・アカデミー・フォー・ウインド」の制作を経て、2022年より現職に就く。現在、舞台芸術・音楽公演制作のほか、特別支援学校や社会福祉団体における音楽ワークショップ事業「Workshop Workshop! コンビビアル・プロジェクト」を担当。一般財団法人地域創造 公共ホール音楽活性化事業 サブコーディネーター。北海道生まれ、埼玉県育ち。

https://www.t-bunka.jp/about/on_stage.html
プロフィール写真

松浦 知也Matsuura Tomoya

SoundMaker

音に関わるメディア・インフラストラクチャ技術を実践を交え批評的にデザインする活動を「音楽土木工学」と称して研究。ハウリングだけで音を出す自作電子楽器「Exidiophone」などを用いての演奏活動、音楽プログラミング言語「mimium」の設計と開発のほか、近年はDIY半導体の制作に取り組む。分担執筆に「クリティカル・ワード ポピュラー音楽」(2022年、フィルムアート社)。1994年生まれ。2022年九州大学 大学院芸術工学府 博士後期課程修了。同年より東京藝術大学 芸術情報センター 特任助教。

https://matsuuratomoya.com/

伊藤 隆之Ito Takayuki

シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

2023年まで山口情報芸術センター[YCAM] InterLabディレクターをつとめる。現在は、Civic Creative Base Tokyo [CCBT]にてテクニカル全般のディレクションを行う。音響エンジニアリング、ソフトウェア開発からバイオテクノロジーの応用まで、幅広い技術ディレクションを手がけ、多くの芸術作品やワークショップの制作、イベントやプロジェクトの企画などに関わる。

イトウ ユウヤIto Yuya

テクニカルディレクター

近畿大学文芸学部芸術学科演劇芸能専攻在学中より、カンパニーを立ち上げ、演劇活動を始める。その後、IAMASに在籍し、それまでのパフォーマンスでの活動をベースに作品制作や研究を行う。卒業後は、山口情報芸術センター[YCAM]を経て、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]やシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]等のテクニカルスタッフとして活動。また、メディアアートや現代美術、演劇/パフォーマンス等の様々な領域にて、アーティストの作品制作補助(プログラミング、造形)、イベントのオペレーターや舞台監督を行う。さらに「DrillBros」というユニットで映像とパフォーマンス/ライブの関係性について考察や実践も行う。2023年arsaffix Inc.設立。

https://www.itoyuya.info/
撮影:鈴木穣蔵

伊原 小百合Ihara Sayuri

東京文化会館ワークショップ・リーダー

東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士及び博士課程(音楽教育)修了。子どもたちが音や楽器とより面白く出会う方法を追求している。主な著書に『探索して音に出会う』(2021年、みらい)、『わたしたちに音楽がある理由』(今川恭子編、2020年、音楽之友社)等がある。保育士資格と中学校・高等学校教員免許(音楽)をもつ。現在、玉川大学教育学部乳幼児発達学科専任講師として保育者・教員養成にあたる。

薄羽涼彌氏のアーティスト写真
Photo: Shoto Hayakawa

薄羽 涼彌Usuha Ryoya

映像作家、ゲーム開発者

映像メディアを通して、人間の知覚やコミュニケーションのあり方を再認識する作品制作を行う。映像作品は国内外の国際アニメーション映画祭での上映や、デザイン教育テレビ番組への映像提供も行う。携わったゲーム作品はNTTインターコミュニケーションセンターでの展示や、「神ゲー創造主エボリューション2023」(NHKエンタープライズ)でグランプリを受賞する。東京藝術大学芸術情報センター特任助教。

https://www.mikyokyuji.com/
撮影:鈴木穣蔵

坂本 夏樹Sakamoto Natsuki

東京文化会館ワークショップ・リーダー

東京音楽大学大学院修了。和洋女子大学非常勤講師、東京音楽大学助教としてワークショップやアートマネジメントの授業を担当する。また音楽ワークショップ・アーティスト「おとみっく」として全国各地で音楽ワークショップや参加型コンサートを展開している。

撮影:Stephen Illife

Sasa-MarieSasa-Marie

SignPoet(手話による「てことば」で詩を紡ぐ人)、ミュージック・アクセシビリティ・リサーチャー

ろう詩人。身体とことば、音楽などによる五感で感じる空間インスタレーションとポエトリー・リーディングを展開。2023年4月に、ろう俳優河合メアリとともにろう者の“おんがく”、ろう者の詩などのろう芸術表現を伝える団体ミナテマリを結成。2018年にアートプロジェクト「TURNフェス4」(東京都美術館)のパフォーマンス作品に出演。主な企画制作作品に彫刻家平櫛田中にオマージュを寄せた「でんちゅうさん」シリーズ(2019-2024)、サイレントなポエトリーリーディングをメインにした「Silentwilight」(2023-)がある。東京文化会館ミュージック・ワークショップアクセシビリティアドバイザー。九州大学大学院芸術工学府博士後期課程在学中。2024年度文化庁新進芸術家海外派遣制度研修員。ろう者、聴覚障害者の音楽の鑑賞環境等について研究中。

プロフィール写真
撮影:鈴木穣蔵

櫻井 音斗Sakurai Oto

東京文化会館ワークショップ・リーダー

国立音楽大学演奏学科打楽器専攻卒業。幼児教育に精通し現在までに500名以上の幼児に音楽指導を行う。五嶋みどり氏が理事長を務める「ミュージック・シェアリング」に所属。楽器指導支援プログラムに参加し、障害のある子どものための音楽活動にも力を入れている。

撮影:鈴木穣蔵

古橋 果林Furuhashi Karin

東京文化会館ワークショップ・リーダー

東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻修了。現在、大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻助手。乳幼児から大人まで幅広い層を対象にワークショップを実施するほか、特別支援学校や高齢者施設、子ども食堂等でのワークショップ実施にも力を入れている。趣味は楽器収集。東京、大阪を中心に全国で活動中。

三浦 大輝Miura Daiki

エンジニア

一関工業高等専門学校在学中に岩手発・超人スポーツプロジェクトに出会い、スポーツは創れるということ、みんなで何かを創っていくプロセスの面白さに気付く。以降、岩手発・超人スポーツプロジェクトのファシリテーターとして活動。未来の運動会でデベロップレイヤー達の要望を一瞬で実装するエンジニアに感銘を受け、パートナーが欲しいものをプロトタイピングしながら一緒に創っていくことを目指す会社、株式会社オモローグ[omororg]を創業。面白い組織、面白い生命体を目指して日々デベロップレイしている。山口に兄弟子がいる。