Import { Concept }
// ごあいさつ
CCBTでは、知識と技術とアイデアを表現へと結びつける「スキルセット(Making with Thinking)」を育み、アート&テクノロジーのスキルと応用能力を持った次世代の人材育成に取り組んでいます。コアプログラムのひとつ「未来提案型キャンプ」は、多様な人々が協働し、アートとデジタルテクノロジーによる創作活動を行う数日にわたるワークショップです。本プログラムは、テーマについて学びながら、社会的な課題を発見し、クリエイティブなアプローチを提案・共創していくことを目指しています。
第1回目のキャンプのテーマは、「コンピューターによるデザイン(Computational Art and Design)」を社会や空間へ「import*=持ち込む」こと、としました。90年代以降、アートやデザインの教育現場では、コンピューターを用いたカリキュラムが増加し、テクノロジーを媒体にデザインすること、表現することの重要性が改めて注目されるようになっています。講師・ファシリテーター・参加者の総勢40名で取り組んだ5日間の本キャンプでは、プログラミングやコードの記述が個人の表現を超えて 、社会への新たな提案、他者との協働の手法へと展開される可能性を探求しました。
最終課題としたグループワークでは、渋谷のデジタルサイネージの新たな可能性や、子どもたちの遊びのための新しいツール、人々と共有可能な新しい時計のシステムを構想し、プロトタイプが制作されました。
// ディレクターより
「import」は、誰かのコードを自分のコードに取り込む場合に使用します。自分の書いたコードを誰かが取り込めるようにするには、「export」します。プログラムを取り巻く世界は、importとexportで常に更新され続けており、全てのプログラムには、それを書いた誰かがいます。たとえAIによって書かれたものであっても、元を辿ればそのAIを作った誰かがいるのです。
コンピューターを媒介することで、私たちは鏡のように自分自身や社会を見ることになります。カメラやマイクを始めとしたさまざまなセンサーやアクチュエーターを駆使し、人の営みを代替したり、拡張したりするプログラムを作っています。そこには少なからず偏見や、不具合が潜んでいるでしょう。これらを修復、あるいは作り直すには、多様な文化、異なる認知を持った人々の協力が必要です。ひとりひとりのアイディアや創造性、日々の実践が、コミュニティの大きな力になります。
ジョン・マエダらによって開発された『Design By Numbers』を始めとして、美術や音楽を通してプログラミングできる環境が広まり、プログラムを書く人は多様化しました。企業から提供される商品としてのソフトウェアをただ使うだけでなく、必要なものは自分たちで作り、拡張し、創作活動に取り入れられるようになりました。私たちが考える「未来提案」とは、現在の延長上にある流行を先取りすることや、将来を予測することではありません。過去を見つめ直し、あり得たかも知れない未来を創造することです。今回のキャンプは、有識者によるハンズオンやレクチャー、新しい仲間とのグループワークなどを通じてそれらを体験することができる絶好の機会です。
Import { Programs }
- 参加者のみ
- 公開レクチャー
- 成果発表
- 休憩
Import { Archives }
// DAY 0 - 2023.02.12
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AIの飛躍的な進化について、ジョン・マエダ氏はその変化を「宇宙人の到来」「スーパーサイヤ人の出現」と表現。マエダ氏は、過去に類をみないテクノロジーによる変革が訪れつつある状況を概説し、この時代を生き抜く私たちが持つべき視点を語った。AIが機械学習できる事象は、過去に人間がつくりだしたものであり、人間の欲望が色濃く反映される。だからこそ、そこから除外されゆくクリエイティビティと多様性を気遣い、マジョリティや個人の意見を共に大切にすることの重要性を語った。
アート&テクノロジーの分野を牽引してきたマエダ氏は、Zoom越しにホワイトボードでの描画とリアルタイムに投票結果を確認できるサービス「Mentimeter」を利用して講義。参加者の質問を 見ながら受け答えをしていくインタラクティブな講演を、約350名が視聴した。
// DAY 1 - 2023.02.19
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5日間のキャンプの初日。25名の参加者が集合し、さらにコンピューターアートとデザインの表現・教育分野のパイオニア的存在であるゴラン・レヴィン氏も合流。3時間・休憩なし!のレヴィン氏による白熱のハンズオンワークショップを体験。レヴィン氏から提示されるルールに基づき、「身体を動かしながら人の流れをつくる」「複数人でスケッチをする」「単語ゲーム」の3つの手法でアルゴリズムの原理とコンピューター思考を、体験を通じて学んだ。
さらに、建築家の豊田啓介氏と、講師のセオ・ヒョジョン氏による講演を一般公開イベントとして開催。豊田氏からはコンピューテーショナル・デザインによりデジタル/フィジカル/情報の世界へと広がる建築の可能性が語られた。また、デイリーコーディングからデジタルサイネージへと派生していくヒョジョン氏の創作活動を事例に、コンピューターアートとデザインの都市空間への展開と、その可能性がディスカッションされた。
// DAY 2 - 2023.02.20
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レヴィン氏のワークショップで温まった参加者たちは、2日目に、改めて各自の活動をプレゼンテーション。学生、主婦、会社員等の様々なバックグラウンドをもつ参加者が自身の創作活動とモチベーションを共有。参加者25名の活動紹介の後には、セオ・ヒョジョン氏によるハンズオンワークショップ「Body Drawing」が開催された。
このワークショップは、オープンソースソフトウェアNodeBox 3と、カメラのポーズをリアルタイムで解析・データ化するPoseOSCを使用。二人一組になり、身体の動きをラップトップで取得し、データ解析によるゲームや描画システムを開発した。完成後には、全作品を参加者が説明・体験し合い、会場は大盛り上がりとなった。
前日には、参加者がPoseOSCのバグを発見。それに対し、参加者の一部がライブラリのバグを修正し、みんなにDiscordで配布した。困難をDIYとシェアカルチャーの精神で乗り越える、キャンプならではのエピソードが生まれた。
// DAY 3 - 2023.02.21
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グループワークがスタートし、講師とファシリテーター10名がさらに合流!3テーマ/6チーム(各テーマを2つのチームが取り組む)で、最終成果に向けた試行錯誤がスタートした。課題テーマは、渋谷のデジタルサイネージの新たな可能性[公共地としてのデジタルサイネージを考える]、子どもたちの遊びのための新しいツール[Gakki]、新しい時計のシステム[時計と系]の3つ。グループワークの前には、講師より、それぞれのテーマのレクチャーを参加者全員に実施。プログラムディレクターから、各グループのメンバーと課題テーマが割り当てられ、各4〜5名のグループでの創作活動がスタートした。グループごとに、クリエイションやブレインストーミングなどの創作プロセスに変化が生まれたことで、最後の中間発表後には、参加者にあせりと緊張感が生まれた。
// DAY 4 - 2023.02.22
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// DAY 5 - 2023.02.23
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プログラムディレクターのリーダーシップが最高潮を迎えた最終日。参加者間のDiscordには朝の5:00までやりとりが…。会場でも、全員急ピッチで成果発表と展示に向けた追い込みを行った。参加者は、成果物の仕上げのみならず、プレゼンテーションのスライド、ドキュメンテーションの映像、成果展示もグループで制作。運営チームも全力で伴走し、成果展示の設営には山口情報芸術センター[YCAM]のテクニシャンも応援に駆けつけた。
昼過ぎには、各チーム20分間の成果発表・プレゼンテーションが行われた。初日の雰囲気とは異なり、参加者間の質疑応答も活発に交わされた。そのどれもが互いへのポジティブな意見やメッセージであったことは、プログラムディレクターが最初に伝えた「このキャンプは競争ではなく共創である」を体現するものだった。この5日間のキャンプで培われた協働とコミュニティから、新しいコラボレーションと未 来が提案されていくことを祈っています。みなさまおつかれさまでした!
Import { Participants }
穴井佑樹
プログラマー、アーティスト/non-classic 株式会社
阿部和樹
プログラマー
石井飛鳥
アーティスト
遠藤勝也
プログラマー、アーティスト/株式会社スタジオ・アルカナ
大山貴史
エンジニア、インタラクションデザイナー
川明日香
デザイナー/武蔵野美術大学学生
kumo moku
多摩美術大学学生
桑﨑真里亜
デザイナー、映像ディレクター/武蔵野美術大学学生
小林真幸
デザイナー、ウェブエンジニア/映像ワークショップ合同会社
小南明花音
甲南女子大学学生
頃安祐輔
音響作家/筑波大学大学院生
柴田一秀
デザイナー、エンジニア
ジョイス・デン・ヘルトグ
プログラマー、アーティスト/ライデン大学学生
shintaro ono
開発者
mole^3
版画家
Senbaku
クリエイティブコーダー
永田一樹
アーティスト/慶應義塾大学学生
浪川洪作
プログラマー、アーティスト/筑波大学学生
成瀬陽太
ビジュアルプログラマー/慶應義塾大学学生
羽田光佐
アーティスト
増本慶
デザインエンジニア、アーティスト
松岡佑馬
エンジニア、デザイナー、アーティスト/慶應義塾大学学生
松村智也、アイメイトの肉じゃが君
筑波大学研究生/NPO NEW VISION
山岸奏大
エンジニア、デザイナー/情報科学芸術大学院大学学生
リュ・ユモエ
観察者/早稲田大学学生
Import { Lecturers }
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ジョン・マエダ
テクノロジスト/マイクロソフト デザイン&AI統括責任者
ゴラン・レヴィン
アーティスト/エンジニア/リサーチャー/教育者
セオ・ヒョジョン
アーティスト/Samsung Art & Design Institute 教授
豊田啓介
東京大学生産技術研究所特任教授/NOIZ/gluon
会田大也
ミュージアム・エデュケーター
荒牧悠
アーティスト
大島遼
プログラマー、インタラクションデザイナー
堀宏行
プログラマー、テクニカルディレクター
稲福孝信
プログラマー
木村優作
テクニカルディレクター、エンジニア
真崎嶺
グラフィックデザイナー
MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕
アーティスト、エンジニア、デザイナー
萩原俊矢
ウェブデザイナー、プログラマー