
DAY 0
2024.08.31
事前説明会
- プログラム紹介
- 講師紹介
- ワークショップ「微生物サンプル採集」
2024.09.21
基調講演01「変わりゆく生命の概念」
講師:オロン・カッツ(アーティスト/SymbioticA共同創設者)
キャンプに関する事前説明会を対面で開催した。説明会後、自分自身で身の回りの生態系をデータとしてとらえる一環として、目に見えないミクロな生命体である微生物のサンプルを参加者が採取した。どのような微生物が自分たちの身の回りに存在するのかを知るために、CCBT内の様々な場所で採取した。採集したい場所を綿棒で3分間擦り、微生物の採取法を学んだ。その後、微生物を同定するための遺伝子解析を行う企業に解析を依頼した。また、自身の生活する周辺にどのような生物が生息しているかを調べるために、周囲の動植物を記録・観察することをキャンプ開催までの宿題とした。
その後、バイオアーティストであり、バイオアートの研究機関SymbioticAのディレクターでもあるオロン・カッツ氏による基調講演が行われ、氏の培養肉のプロジェクトから最新の3SDCプロジェクトまで、これまでの活動や作品とその背景が話された。さらに、参加者との対話を通じて、生命科学の応用に伴う倫理的な議論の必要性や、アーティストのあり方や心構えについて語られた。
DAY 1
2024.10.12
- 事業説明「本プログラムについて」、参加者活動紹介
- レクチャー・ハンズオン「環境の微生物を調べる」
講師:鈴木治夫(慶應義塾大学環境情報学部 准教授)、鈴木留美子(国立遺伝学研究所 生命ネットワーク研究室 特任准教授) - 基調講演02「多種が共存する都市と微生物による指標:科学的で創造的な実践から」
講師:エリザベス・エナフ(計算生物学者、アーティスト)
キャンプ1日目は、25名の参加者がCCBTに集合し、午前は参加者による活動紹介が行われた。目に見えない微生物の世界をテーマに、鈴木治夫氏と鈴木留美子氏を講師に迎え、微生物学とバイオインフォマティクスのレクチャー・ハンズオンが実施された。レクチャーでは、微生物の定義からDNA解析などの研究方法の基礎に加えて、新型コロナウイルスや薬剤耐性菌などを例に、私たちの行動が都市や室内の微生物環境に与える影響について学んだ。続くハンズオンでは、微生物などのDNA配列をコンピュータでどのように解析していくか、RStudioを用いた計算やBLAST検索を用いた相同性解析の演習を通じて基礎を学んだ。
基調講演では、ニューヨーク在住の計算生物学者・アーティストのエリザベス・エナフ氏がオンラインで登壇した。生物学・デザイン・都市工学といった学際的な研究プロジェクトの中から、微生物のアクアリウムのようなインスタレーションや、ミツバチの巣箱や大気中から微生物サンプリングを行うツール開発などが紹介された。土壌汚染や気候変動といった人為的な活動による都市環境の変化が微生物の多様性にもたらす影響について、さらに微生物環境を知るためのツールデザインの重要性について学んだ。
DAY 2
2024.10.13
- レクチャー・ハンズオン「クリエイティブなデータビジュアライズの基本と実践」
講師:山辺真幸(データビジュアライズデザイナー、一橋大学特任講師)、角田創(デザイナー、エンジニア) - 基調講演03「群れの科学:バラバラな足並みと動きの読み合い」
講師:村上久(研究者/博士(理学))
2日目は微生物のDNAや、動植物の調査で得られたデータを可視化する手法について、山辺真幸氏のレクチャーが行われた。データそのままでは体系的な意味をとらえることが難しいが、可視化することでそれが可能になることを学んだ。また、可視化の手法を工夫することで、それまで見えていなかった事実の発見にも貢献することが説明され、processingを使用したデータの取り扱い方や、可視化の基本的な手法について解説された。その後、微生物や動植物の関連性や特徴に関するデータベースや、データの解釈に役立つツールなどが紹介され、それらを利用して参加者自身で何かつくることを試みた。最後に、データビジュアリゼーションの作品づくりの心構えや留意点についてのアドバイスでレクチャーは締められた。
レクチャー後は、動物行動学者である村上久氏の基調講演が行われた。ミナミコメツキガニの群れの行動の分析や、そこから得られた群れの行動の数理モデル、人間の群衆がすれ違う時の行動についてなど、これまでの研究が数多く紹介された。質疑応答では参加者から多くの質問がよせられ、活発な議論が行われた。
DAY 3
2024.10.14
- レクチャー・ハンズオン「動植物などの観察とデータ収集に関して」
講師:池田威秀(博士(理学)/生態学、動物行動学、宇都宮大学特任助教) - ワールドカフェ
- グループワーク
3日目は、目に見える動植物の生態系をテーマに、池田威秀氏によるレクチャー・ハンズオンが行われた。レクチャーでは生態学の考え方から生物の進化、そして動物行動学との繋がりを学んだ。また、アマゾンの生物多様性保全を目的としたフィールドミュージアムプロジェクトにも関わってきた、池田氏の研究活動の話を織り交ぜながら、生物多様性や生態系についてのトピックが話された。
ハンズオンでは、休憩時間にCCBT近辺で拾った木の実から植物の同定、そして送粉の過程、種子散布過程について他の生き物との関わりを考察するグループワークが行われた。また、参加者が事前に観察記録した動植物のデータから生き物同士のネットワークを考え、生態系へと繋げる解釈の方法を教わった。
レクチャー・ハンズオン終了後、参加者全員が前日からホワイトボードに貼り出した興味関心のポストイットから、主要なキーワードが選出された。そのキーワードをもとにテーマを設定し、ワールドカフェの実施を通して各自の興味関心の解像度を高めた。その後、取り組みたいテーマ毎にチームを編成し、各チームのプロジェクトを立ち上げるためのブレインストーミングが行われた。
DAY 4
2024.10.15
- グループワーク
- 基調講演04「38億年の生命の歴史物語に学ぶー生命誌」
講師:中村桂子(理学博士/JT生命誌研究館名誉館長)
DAY 5
2024.10.16
- グループワーク
- 成果発表
4日目、5日目は、プロジェクト展示に向けたグループワークが行われた。多様な分野の専門的な知見を持つファシリテーターおよび講師によるアドバイスが提供された。4日目に行われた中間発表でのフィードバックをもとに、アイディアをブラッシュアップし、5日目の成果発表に臨んだ。発表では、各グループの成果物に対する解説が行われ、どのグループもコンセプトからアイディアに至るまでユニークな視点で生態系をとらえていた。また、表現手法も様々であり、「生態系」という1つのテーマから非常に多様な6つの展示が完成した。キャンプを通し、参加者自身が生態系に対して主体的に関わることで、生態系への解像度が高まり、生態系を再考したことが反映されている展示となった。
4日目の最後には、中村桂子氏の基調講演が行われた。生態系の一員としての人間の生き方を考えるために、生命誕生の38億年の歴史物語の視点が語られた。生き物の内側には生きているという共通の現象が存在し、生き物を外側から見て「もの」として捉えるのではなく、その生きているという「こと」について、内側からの目線で考える大切さが伝えられた。